World Maker
血色悪夢
目を開いたとき、彼の手に剣が握られていればいい。
それがありえないことだと知っていながら。
だからこそ強く願う。
目を開いたとき、彼の手に剣が握られていればいい。
そうして、たくさんの人の命を奪った私を。
彼の父も母も友人も知人も親類もすべて奪った私を。
この国のすべてを奪い征服し蹂躙しようとした私を。
憎しみのこもった眼で見つめて。
恨みのたぎった声で怒鳴りつけて。
そうして、その剣を振りおろせばいい。
刺して刺して刺して。刺し貫いて殺せばいい。
国を守りたいと望みながら。
人を護りたいと望みながら。
命を救いたいのだと望みながら。
ただ多くの人の命を奪っただけで誰一人として守れなかった、役立たずな私など、そうやって惨めに殺されればいい。
一つの理想も。
一つの夢も。
何一つとして叶えることのできなかった私など。
とっとと朽ちて果てればいいのに。
私は。
バカみたいな偶然に生かされて。
愚かな少年に助けられて。
間抜けにも、生きながらえた。
こんな自分を、どうして彼は生かすのか。
どうして世界は生かすのか。
「ねえちゃん、食事持ってきたよ………って、どうかした?」
そして。
この世界に未練なんてないはずの私は。
どうして。
この声を聞くたびに、泣きそうになるのか。
私にはもう、わからない。
(女将軍と敵国の少年。戦場に血まみれで倒れていた女性と、それを見つけて家まで連れて帰った戦災孤児。鮮烈な朱に浸されて、彼女はただ美しかった)
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