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死神の日常 T
そこは、まさしく戦場だった。
赤毛の馬を駆りながら、剣を薙ぐ。
それは判断ですらない、一瞬の反応。純粋なる反射。
断末魔の悲鳴もなく事切れたかつて生命を宿していた肉塊を、見るでもなくまた駆ける。
戦場で足を止めることとはすなわち死を招くことを、彼女は知っていた。
切る風を頬に感じながら、剣に付着した血糊を払い、研ぎ澄まされた感覚をむしろ煩わしいと彼女は感じた。
「赤髪…?まさか、死神――ッ!」
その戦場で、何度その名を聞いただろう。
戦場にふさわしく不吉な通り名。
不本意なその言葉を、彼女はまた躊躇いなく切り捨てる。
そしてやはり、煩わしいと感じる。
畏怖の視線も。恐怖のまなざしも。呪詛の言葉も。
過敏ともいえるほど鋭敏になった知覚器官は、すべてを選り好みすることなくさらってしまうから。
将でありながら座すのではなく。
進んで自ら前線へと赴き剣を振るうその姿は、流れるように尾を引く真紅の髪と相まってまさしく死を招く女神のようであり、その姿がどれだけ味方に勇気をもたらし、どれだけ敵に恐怖を植え付けることか。
その事実を、本意ではなくとも理解してはいる死神は、
----だから今日も、戦場にいた。
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