泰権連載
2
巧く動かない右手を何とか動かし、孫権の頬に触れる。
孫権の顔色は優れないが、見たところ大きな傷は無い。
もう一度辺りを見渡し、そこが城の一室だと判り、一先ず安心した。
どうやら無事らしい。
主も、自分も。

周泰は手足の鈍い感覚で、随分寝ていたのだと気が付いた。
改めて、自分の身体の状況を確かめたが、悲惨なものだった。
身体中の至る所に酷い傷があり、左目には包帯が巻かれて視界が狭い。
長い間寝ていたせいか、筋力は衰えている。

「・・・・・・ん」
周泰が自分の身体を調べていると、吐息のような孫権の声が耳についた。
「孫権様・・・・・・」
起こしてしまったと不安になり、密やかな声で名前を呼ぶ。
孫権の顔色の悪さを考えると、出来ればまだ眠っていてほしかったが、声に導かれるように孫権は覚醒した。

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あきゅろす。
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