泰権連載

「孫権様、まだ寝ておられるのですか?孫策様がお待ちですが」
「う、いや、起きている・・・すぐに行くと伝えてくれ」
孫権はしどろもどろに返事を返し、寝台から足をおろした。
「いッ」
右足が地面に着いた途端、微かな痛みを感じ眉を寄せる。
「孫権様?・・・・・失礼を」
心配そうに声を掛けてきた周泰が、孫権の足を持ち上げ足裏を確認すると、昨日孫権自身が散乱させた酒瓶が割れていたのか、小さな切り傷がありそこから血が滲んでいた。
孫権は自業自得の怪我に苦笑するしかない。
「た、大した事じゃない・・・っ、周泰!?」
これぐらいの小さな傷など戦場に出れば傷ではないのだと、孫権が話終える前に、孫権の身体は周泰によって宙に浮いていた。
「失礼致します」
横抱きされ、一瞬理解が遅れてしまったが、周泰はそのまま歩き出してしまった。
「周泰あ、歩ける!!降ろせ!!」
「・・傷が開きます」
「大した怪我じゃない!!」
「菌が入るやもしれません・・」
どうやらどうあっても降ろす気がないらしい周泰に、孫権はすぐに根負けしてしまった。
「〜っ分かった、せめて人通りが少ない道で頼む・・・」
恥ずかしいからと小さな声で付け足せば、周泰は昨日よりも自然に、小さく微笑んでみせた。


きっと、私は一生その顔を忘れはしないだろう。

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あきゅろす。
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