泰権連載

どれほどの時間が流れただろうか。
孫権が泣き止む気配は無く、慰めの言葉を持たない周泰にはなす術も無い。
口下手な己には孫権を泣き止ます事は出来ないのだろうか・・・。

孫権が泣く程に、周泰の心は乱れた。
泣き止んでほしいと思った。
子の夜泣きに困る母親とは違う。
転んで泣いている子に強くあれと望む父親とも違う。

己には流れ続ける涙を拭う事しか出来ないのだろうか。


『笑顔の一つでも見せてやれば違うのによぉ・・・』

ふと、孫策の声が蘇る。
焼け落ちた村で見つけた生き残った子供達に見せた孫策の笑みと、それを見て安心した表情を浮かべた子供を思い出す。
「・・・孫権様」
優しく、出来うる限り優しく孫権の背を撫で不器用ながらに笑みを作ってみる。

もう何年も作った事のない表情。
上手く作れたかは判らないが・・・。

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