泰権連載
5
孫権は書簡を手に何やら勉強中の様だ。
「勉学・・・ですか?」
「私は元より体力はあまり無いからな・・・文武両道とは行かずとも、勉学を怠っていては兄の役にも立てまいよ」
そう言って、孫権は笑みを見せてくれた。
その笑みにホッと一息吐き、周平は他愛もない話をし始めた。

次の日も、また次の日も。

何日かそれを繰り返し、孫権の様子を窺っているとふと気付いた事があった。


孫権様は兄を避けている。


周平が兄の話を出すと話題を変えようとし、兄の姿を見ると辛そうに席を外した。
兄を嫌っている訳ではなさそうで、命をかけて孫権を護った兄への信頼は薄くはなさそうに見える。

「孫権様は・・・兄の事がお嫌いで?」
周平はそう問いかけた。
遠回りにしていては、いつまで経っても孫権の本心を聞き出す事が出来ないと思ったからだ。
「・・・・・・そんな事は無い・・・命を救ってくれた恩人だ」
「それなら・・・何故・・・・・・」
その先を口にする事は出来なかった。

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あきゅろす。
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