泰権連載
2
「まぁ、無事で何よりだな」
「・・・あぁ」
蒋欽の言葉に耳を傾けながら、ちらりと孫権を見やる。
周泰の無事を喜び、互いに笑いあう中で、孫権は相変わらず俯いたままだった。
気にはなったが、主になんと声をかけてよいか判らず、周泰もまた沈黙してしまう。
そんな周泰を気遣い、孫策達は部屋を後にした。
孫権も孫策に付いて部屋を後にしたので、周泰は一人になった部屋で己の荷物を纏めだした。
今まで自分が寝ていた寝台を片づけ、自身が与えられた屋敷に戻る事にしたのだ。
「そんなに急がなくても・・・」
まだ躰は本調子には戻っていない。
それを知っている医師は周泰を引き留めたが、自分がこれ以上貴重な寝台を占領するわけにはいかないと断った。
曲阿での戦闘での怪我人はまだまだ居る。
治療室の寝台の数は圧倒的に少ない。
部屋の外に布団を敷いて代用する程である。
そんな中、孫権の護衛・・・しかも孫策直々の指名だったという事だけで、周泰は優遇されていた。
それが周泰には納得出来なかった。
本当は、歩けるようになってすぐに自身の部屋に戻ろうとしたが、片目で距離感が掴めない状態で返す事は出来ないと許可を貰えなかった。

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