泰権連載
1
朝方、ようやく左目の包帯が取られた。
今まで暗い闇に覆われた片目に光が差し、一瞬目眩を感じた。
「見えますか?」
医師がそう訪ね、蒋欽や周平、孫策達が息を呑んで見つめていた。
「大丈夫だ」
久々に感じる光に、まだ微かな目眩は感じるものの、視界は広い。
「・・・良かった」
蒋欽が深く安堵の息を吐いた。
片目では何かと困る事が多い。
見えるに越したことはない。
「傷は残っちまうな」
左目の下。
頬を裂くようについた傷は残り、消える事は無いと言う。
「女ではありませんので・・・・・・」
気にはならない。
「確かにそうだ」
孫策が喉の奥で笑う。
つられ、蒋欽達も笑い声をあげた。
そんな中、孫権だけは部屋の片隅でその光景を呆然と眺めていた。
気まずそうに作ったような笑みを浮かべ、近くに来いと呼ぶ孫策に曖昧な返事を返していた。

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あきゅろす。
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