泰権連載
7
重い瞼を必死で押し上げた。

初めに見えたのは薄暗い天井。
次に視線をさ迷わせ見つけたのは、己の身体に顔を伏せ涙を流す主の姿。
片目だけの狭い視界で孫権を捉え、震える肩に胸が痛んだ。

「・・・・・・孫権、様」

静かに、驚かさないようにと声をかける。
名を呼んだ瞬間、孫権の肩が大きく上下した。
「っ・・・」
暗闇の中、孫権が息を呑む音だけが耳につく。
主は周泰の顔を見ようとはしなかった。
否、周泰に逢わせる顔が無いと思い、顔を見せる事が出来なかった。
孫権は何度か周泰の名を口にしたが、いずれも嗚咽に紛れ言葉と言うにはあまりにも酷く、ただ周泰に縋るように泣き続けた。
うずくまる孫権の背は小さく、主の若さを垣間見た気がして困惑してしまう。
「孫権様・・・・・・」
震える肩に触れると、孫権はゆっくりと顔をあげた。

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