泰権連載
6
その啜り泣きはまるで、夢の中のような錯覚を周泰に感じさせた。
その泣き声は己が殺めた人間達の、自らの命を惜しむ泣き声とは違いか細い。
どちらかと言えば悲観した声では無く、ただ何か大切なものを失った泣き声で、それはまるで、賊を辞めるキッカケとなった際の、仲間の泣き声に近いと思った。
暫く、言葉にならない声を聞いていると、ようやく理解出来る言葉が耳をつく。
「すまない・・・・・・すまない・・・」
聞こえたのは謝罪の言葉。
その後はまた言葉にならず、泣き声だけが部屋に響く。
(・・・・・・孫権様?)
謝罪の声は確かに孫権の声で、周泰は困惑した。
孫権は周泰の意識が戻ってから一度も見舞いには来ていなかった。
そして気づく。
忙しいのだろうと気にはしていなかったが、孫権は周泰の見舞いに来れなかったのではなく、来なかったのだと。
己の過失。
己の未熟さへの嫌気。
自責の念。
周泰に対する感謝と謝罪。
全てが孫権をこの部屋から遠ざけていた。

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あきゅろす。
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