泰権連載
5
「そろそろ左目も治る筈・・・」
明日、一度包帯を取ってみますと言い、医師は部屋を後にした。
明日には左目が生きているか、死んでいるかが判る。
そう思い、包帯の上から、軽く左瞼に触れる。
生きていてほしいが、死んでいたら仕方ない。
周泰は覚悟を決め、布に覆われていない片側の瞼を閉じた。














何かに意識が浮上させられる。
あくまで『何か』という曖昧な感情で、決定的に何だと断定は出来なかったが、その『何か』は、何故か周泰の精神を揺さぶった。
意識が完全に浮上したが、何故か瞼は重く、目を開けられなかった。
瞼の裏からでも、まだ朝も空けていない夜だと解る。
「・・・・・・・・・っ」
真っ暗な闇の中、周泰の耳を打ったのは、誰かの啜り泣く声だった。

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あきゅろす。
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