04
「どうしたの?」
声を掛けられた理由は、なんとなく分かってはいたが知らない振りをしながら聞いてみれば案の定、想像した通りだった。
「新刊読んだ?」
「読んだよ」
また漫画の話しか、と内心溜め息を吐きつつ返事を返しながら携帯を開けば残りの授業時間は30分となっていた。
駄目だな、この時間じゃー講師が来たとしても今日は授業やらないな……。
今度は隠さず溜め息を吐いた私の思いに気付いたのか漫画の内容について、あーだこーだ言っていたななちゃんの口が止まった。
「あぁ、駄目だね。今日は授業やらないよ……」
「だよね、帰れば良かった」
無理だと分かっていながら口にした私に内心同じ気持ちなのか眉を下げて苦笑した。
「first nameちゃん」
「ん?」
「トリップしたいね」
は?
ななちゃんには申し訳ないが、どこか遠くの方を見つめて微笑む彼女に私は悪寒がした。
「漫画の世界に逝きたい」
そう言って笑った彼女が私の世界から姿を消したのは三日後のことだった。
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