08
人の体温が気持ち良かったからかもしれない。私は、いつの間にか白ひげの胸に寄り掛かり眠ってしまっていた。
だから扉が慌ただしく開いてマルコが血相を抱えて入って来たのも知らない。
「うるせぇぞマルコ」
「す、すまねぇ親父……って、そんな場合じゃねぇんだよい!」
「どうした」
「first nameがいねぇんだ!って……あれ?親父、そこにいるのは……」
「グララララ、どうやら逃げて来たみてぇだな」
そう言って白ひげは、自分の胸に寄りかかり幼さの残る少女の寝顔に微笑んだ。
「たっく、なにやってんだよい。すまねぇな親父、すぐ連れて行くからよい」
「グララララ気にすんな。それよりマルコてめぇfirst nameを一人でナースんとこ置いて行っただろ」
「あぁ、だけどよい親父。first nameの奴、俺が出ていってすぐ逃げたんだよい」
お手上げだってポーズをとってマルコは溜め息をこぼした。
「アホンダラァ、しっかりfirst nameを見ろ。右も左も分からねえ奴をほっぽりだすんじゃねぇ。俺はお前に頼むって言ったんじゃなかったのかぁ?」
「……」
ばつが悪いように顔をしかめたマルコに追い討ちをかける。
「first nameは女が怖いんだってよ」
「あぁ?女がかよい?」
誰かの話し声が聞こえる、まだ覚醒しきっていない体を起こせばマルコがいた。
あれ?私……。
顔を挙げれば白ひげの顔、窓に視線を向ければ外はオレンジ色に輝いていた。
あぁ、寝てしまったのか白ひげの上で、こりゃあ白ひげファンだったら鼻血もんだったに違いない。
「やっと起きたのかよい」
「グララララ、よく寝てたじゃねぇか」
「あぁ、ごめんなさい」
いつもこの時間、学校で寝てるから体が覚えているみたいだ。
「グララララ、気にすんなぁ」
いやー、白ひげ心も体もでかすぎだわー。
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