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03



ナノハナ。港町だけあって賑わいはレインベースに負けてない。

レインベースからナノハナまではサンドラ河を挟み、随分と距離がある。歩いたら太陽と月が何回入れ替わるだろうか。だけど、私の能力ならそんなの関係ない。風になってひとっ飛びすればあっと言う間に到着だ。

相変わらず香水臭いその場所に、到着する前から顔が歪んだ。あまり香水は好きじゃない。
以前に一度お使いで来たが、できれば来たくない場所だった。


「さて……」


どうしたものかと、町の入口で腕を組む。ずらりと並ぶ店に、少し好奇心が疼いた。飛び交う言葉はエネルギーに満ち溢れていて誘われているようだった。

エースがいる店も分からなければ主人公たちがいつ到着するかも分からない。これは考えてみれば博打も良いところだ。もし、ここで出会える筋書きなら、探さなくても会えるだろう。急ぐことじゃない。

朝も食べずに飛んで来たため、お腹も良い具合に空いてきていた。まずは腹ごしらえだな。

腰には愛刀と愛銃。白ひげマークのバックルの付いたベルトにバンダナも装着して、久しぶりの海賊スタイル。わくわくしてるのは何でだろう。彼と離れ離れのカウントダウンが始まったっていうのに。

身の引き締まるスタイルにロビンから貰ったマントを靡かせ私は町を探索した。


「お兄さん!彼女に香水はどう?」


お兄さんて。相変わらずこの格好だと男扱いかと苦笑する。髪の長さは関係ないのか。


「遠慮しとくよ。香水は苦手でね」

「あら、もったいない。それは良い香水に出逢えてないのよ」

「良い香水?」

「そう、きっと気にいる一つがあるわ。香りの種類は億万とあるんだから!」


胸を張って言い切ったお姉さんの笑顔は眩しかった。


「じゃあ何か見繕ってくれるかい?」

「もちろん!恋人はどんな人?」

「ははっ、恋人じゃないんだ。でも、いつも世話になっている人でね……」


売り子のお姉さんと話していたら良い時間潰しになったようだ。


「逃がすなー!」


どこからともなく聞こえてきた喧騒。


「あら、何事かしら」

「……」


きたきたきた。込み上げてくる好奇心を抑え切れなかった。弛む頬。誰が予想しただろうか、漫画の世界に行けるなんて。


「お姉さん、ありがとう!」

「え」


舞い上がる砂煙。視界が晴れそこにはもう誰もいなかった。



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