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05



いつも何処でも、どんな時でも身に付けてある携帯もiPodとヘッドホンもなくて不安が不安を呼び不安が募る。


とにかく不安なんだ。


独りが平気だったのはヘッドホンで外の世界が分からないように遮断していたから。


独りが平気だったのはヘッドホンから流れてくる音楽たちが、時に語りかけ語りかけられ私の話し相手でもあったから。


独りが平気だったのは携帯電話という電脳世界で、いざとなったら誰とでも繋がることができたから。


そんな御守り以上の効果を発揮していた物が急に無くなって、独り知らない世界に放り投げられてしまったら私は本当に孤独だ。


独りぼっちなのは知っていたけど独りぼっちだということを、こんなに真っ正面から突き付けられたことはなく、どう対処すれば良いのか全く分からず混乱だ。


前に歩くことさえ怖くて戻る勇気も無くて、ただ時間ばかりが過ぎて逝くのを壁に寄り掛かり待っていた。


ふと気付いたのは廊下の先にある扉に見覚えがあること、一際大きいのが特徴のその扉を見間違えるはずがない。


私の体は自然とゆっくり、でも確実にその扉へと向かって行った。


そして目の前で立ち止まり改めて見上げて見れば、その扉の大きさに驚愕する。


きっと元いた世界にだってこのぐらい大きい扉あっただろうけど、行動範囲が家、学校、コンビニ、スーパー、本屋……と実に狭い私にはありえないことだった。


扉をノックする時の緊張感が嫌いだ。


返事が返って来なかったらどうしよう。寝ていたところを起こしてしまったら?仕事中だったら。はたまた情事中だったりしたら……。


片手を挙げノックする体勢のまま固まって悶々と考えていると中から声がかかった。



「入ってこい」


「……失礼します」



白ひげ相手に悩んだって仕方がなかったようだ。


彼は何でもお見通しなんだから。




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