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07



眠れずにいた。部屋に響く秒針が私の気持ちを何故だが逸らせる。そわそわした気持ちを抑えられない。堅く目を閉じても眠りになんか落ちることはできなかった。


深夜零時を回った頃、彼は音も無く帰って来た。やっばり、あの日を思い出してしまう。彼が、ゆっくりと近付いて来るのが怖くて仕方がなかった。


「first name、ここにいたのか」

「お、おかえりなさい」

「あぁ」


何だろう。胸騒ぎが止まらない。鼓動が速まる。


「first name」


彼の腕の中に包まれた瞬間、真っ暗になった。あの香りがする。あの時と同じ香りがする。やだ、どうして。やだ、やだやだやだ!



「いや!」


私は彼を拒絶した。だって、あの時と同じ匂いがしたんだもん。また、その香水の相手を抱いて来たんでしょ?今までも私が知らないだけで、何度も、何度も何度も何度も、その女を抱いたんでしょ?

顔も知らない誰かと彼が寝ている姿を想像しただけで吐き気が込み上げてきた。


「てめぇ」

「あ……」


彼が凄んだだけで私の思考は違うことに支配された。


「ご、ごめ、なさ。ごめんなさい!ごめんなさい!ごめん、なさ……ッ」


私は彼に縋り付いて何度も何度も謝った。こんな自分知らない。こんな女々しい女知らない。こんな弱い私は、いらない。

出てけなんて言わないで。いらないだなんて言わないで。どうか、私を突き離さないで。



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