08
私の心とは反対に空には太陽が燦々と照り付けている。手で傘を作り恨めしげにそれを見つめる。
背中に感じる砂の感触。鼻をくすぐる渇いた砂の匂い。私を安心させてくれる。
あの日から三日経つ今日も彼の姿はレインディナーズにはなかった。ロビンも珍しく首を傾げていた。こんなに長く何も言わずに姿を消すことはなかったのに、と。
夕陽が赤く染まった頃、鍛練を終えて真っ直ぐ向かうのは彼の執務室兼自室。
重たい扉を開く時、一番緊張が高まり、開けた後、一番絶望する。空席のそこに彼の姿はない。
「どうして」
漏れた言葉は誰にも届かず、答えは得られない。無意識に握り締めた拳。手のひらに爪が刺さって痛かった。
シャワーを浴び、砂と汗を流した後、彼のベッドに身を投げる。この部屋での生活が長くなってきたものの、彼のいない彼の自室は全然安楽にできず、むしろ胸が締め付けられた。
「クロコダイルさん……ッ」
会いたい。会いたい。会いたい。たった三日間会えないだけで、こんなにも会いたいが溢れだしてくる。
どうして何も言わずに行ってしまったの?私が、あんなことをしようとしたから?
自分の真っ黒な髪に触れる。この世界に来た当時よりも潮風にやられ、だいぶ傷んだ私の髪はお世辞にも綺麗とは言えない髪だった。
髪を切らなければ傍にいてくれるんじゃなかったの?
「……ッ」
込み上げてくるのは孤独。胸を焼き付けるような痛みと涙。
ぐっと胸元を握り締めた私は、痛みと涙を堪えた。
クロコダイルさん。早く戻ってきて。私とあなたが一緒に過ごせる時間は、あなたが思っているよりも、もう少ないんだよ。
この時、イーストブルーのとある小さな村から一人の少年が海へと出ていた。
嫌な胸騒ぎほど、よく当たる。
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