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予想外の寄り道をしてしまったため、私は疾風となりて馳せる。



「あ、見つけた」



ふわっと体を止めて、スパイダーズカフェの前に降り立つ。あぁ、本当に能力持ってて良かった。こんなとこまで徒歩だったら最悪だよ。



「あら、いらっしゃい」



店に入れば良い感じのクラシックが流れていた。



「……」



カウンターに座り、ぐるりと店内を見渡す。客はいない。ナンバーエージェント専用って感じか。私が、ここにきた時点でバロックワークス関係者だって気付いてるかな?社員のつもりはないけど。



「何にします?」


「……紅茶を」



最近クロコダイルに付き合って紅茶ばかり飲んでるから、紅茶好きみたいになってしまった。



「ポーラさん」



置かれた紅茶の脇に手紙を差し出す。



「社長からです」



ポーラの纏う雰囲気が一瞬変わった。それは鋭いものに。ゆったりとした動作で手紙の封を切った。



「あ、美味しい」



紅茶は甘く、私好みの味だった。私がいれるより遥かに美味しい。クロコダイルは、よく文句も言わずに飲んでくれているなと感心した。



「了解、とボスに伝えて下さる?」


「はい、分かりました」



どんな内容だったのだろうと気になったが、あえて聞かないでおいた。きっと聞かなければ良かったと思うような内容だから。



「それにしても、あなた初めて見る顔ね」


「ども、初めまして。素性は企業秘密だと社長に言われているので、風と呼んで下さい」


「風……ちゃん、ね。分かったわ」


「すいません、おかわり下さい」


「あら、気に入った?」


「はい、どうやったら美味くいれられるんですか?」


「フフフ、それは企業秘密よ」



あら残念。精進あるのみってか。三杯飲み終えた頃、日も沈みかけてきたので帰ることにした。



「ごちそうさまでした」


「あなたは、ボスの素性を知っているのかしら?」


「……まぁ、一応」


「そう、また来てね。今度は美味しいケーキも付けるわ」


「楽しみにしてます」



また、ここに来れる機会があれば。風になれば、あっという間に小さくなるスパイダーズカフェ。なんだか早くクロコダイルに会いたくて仕方なくなった。


数時間でホームシック。これは軟禁されてた方が良いかもしれない。



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