09
宴が執り行われた。私の宴なわけがない。あの子の宴だ。あの子はマルコの背に隠れながらクルーに声を掛けられる度にビクついている。
私の中であの子と呼ばれる対象が、ななちゃんから愛ちゃんに変わっていることに私は気付かない。
「あはは、first nameちゃんとは大違いだね」
「何が言いたいんだね、グリーン」
グラスに口を付けながら隣のグリーンを横睨みすれば、あの子を楽しそうに眺めていた。
「まぁ、確かに。first nameは、あんな女女してなかったもんなー」
「うんうん、今も昔もfirst nameは男らしい」
「イエロー、まじでそれ貶してるでしょ」
にやりと笑った顔が、からかう気満々だったから、その場から離れることにした。
「えーすー」
「あっはっはっはっ、first nameー!呑んでるかー!?」
「エースほどは呑んでないけど、まぁ呑んでる」
「そーか、そーか!あっはっはっはっ!」
ダメだこりゃ。出来上がっちゃってますよ。次、行こ。次はマルk……は、ないから……あ、ティーチだ。ティーチにしよー。
「ティーチさーん」
「ゼハハハハハッ。first name、てめぇのポジション奪われちまってんぜ?いいのかっ!?」
「……」
なんてオブラートに包まれてない言葉なんだろう。さすがティーチ、ぐさっときたー。
「ゼハハハハハッ、図星か!」
「むぅ」
「俺ぁ、おめぇのが好みだぜぇ?」
「何それ、セクハラ」
「ゼハハハハハッ、相変わらずひでぇなぁ!」
ティーチと話している間、ずっと視線を感じていた。あの子の視線。何を言いたいかは分かる。ティーチだもんね。
ティーチのせいで全てが変わってしまったんだから。
それでも、今はまだ考えていたくないの。きっと、あなたには分からない。
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