07
黒い渦に呑み込まれる。もがいても、もがいても、もがいても、口から吐き出されるのは沫。伸ばした手は誰に届くわけでもなく、空を握り締め、迫り来る闇に世界は覆われた。
白い風が吹いた。闇を飛ばし、包み込む白い風。靡く髪、肌に触れる感触は柔らかい。
あぁ、戻ってきてくれたの?自然と綻ぶ頬。視界の端に追いやられる闇を、せつなげに見つめた。
ごめんね。今はまだ、闇を受け入れられない。弱くてごめんね。いつか、いつか、いつか一緒に……。
「い……、おい、……おいっ!」
「……ッ」
ぱちりと開眼した目。珍しくすっきり瞼が開いた。
「え、え?え?」
「おい、大丈夫かよい」
「マルコ?」
「隊長だよい」
「あ、うん、隊長。あれ?」
体を起こせば理解。医務室だ。ここは医務室だ、うん。
「あれ?私……何で?」
「あいつらと修行中に、また気絶だ。あいつらが言うには、お前が黒い風を……」
「あぁああああ!そうだそうだそうだっ!」
タオルケットを剥がし裸足のまま床に飛び降りる。
「マルコ隊長!白ひげのところ行ってきますっ!」
取り合えずパパに報告だ。どうやら私はまだ能力を使いこなせていないらしい。……暴走した時のために、白ひげには言っておかないと。
「白ひげ!」
「お、first name!」
「エース!帰ってきてたの!?」
甲板に出ればテンガロンハットを被った弟がいた。
「ただいま、first name」
「おかえり!」
再会のハグを交わしていたら背後から、ぐわしと頭を掴まれた。
「この野郎」
「あはは、マルコ隊長。私、野郎じゃなくて、娘なんだけど……」
「野郎で十分だよい。親父に報告の前に俺にしろ」
ぺしっと後頭部を叩かれ解放された。ちょっとエース、何苦笑してんの。弟のくせに、仕方ねぇ姉ちゃんとか思ってんだろ。
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