10
名前を呼ばれてる。誰が呼んでるの?誰を呼んでるの?
「first name、大丈夫?」
「……」
「first name?」
「……エリザさん」
ぼやけた視界、優しい声にエリザを思い出す。彼女はいつも私を気にかけてくれた。私の物語が終った後も……。
「フフッ、残念ながら私はあなたが口にした女性じゃないわ」
「……ロビン」
「その名は呼ばない約束よ」
「……ごめん」
腕で視界を覆い思考を巡らせる。まだ、いるんだ。あの後、倒れたのかな?記憶が曖昧だ。
「風使いさん、薬よ。飲める?」
あぁ、また風使いさんに逆戻りか。残念。それにしても薬はありがたい。効くかどうかは別にして薬を飲んだだけで安心する。
「頂きます」
重たい体を起こして差し出された錠剤を水で流し込む。喉が渇いていたいたのか、飲み干した。
「休んでいなさい」
「……出ていけと、言われました」
「そのボスからの命令よ。部屋で休んでなさい」
「え、でも……」
「フフフッ。あなた、彼に気に入られたみたいね」
まさか。そんなわけない。出てけと言われた。使えない奴はいらないと言われた。私は使えない奴だ。
「まぁ、好きにしたら」
ロビンは、ひらひらと手を振りながら部屋を出ていった。そして、気付く。あれ?ここどこだ?
見慣れない部屋。明らかに私が使っていたベッドより大きく上質なシーツ。
ど、どこですか?ここ。
クロコダイルの部屋だと気付くのは、彼に蹴り起こされた後。
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