08
閑散とした部屋。壁一面にバナナ鰐の水槽。部屋の真ん中に置かれた長いテーブルの端で一人クロコダイルが夕食をとっていた。
ナイフとフォークが微かに皿を擦る音がするだけで何の音もしない。
音がないのは、いつもと同じ。だけど今日は、いつもと違う。今日は、あいつがいない。
夕食を何故か共にするようになったあいつ。あいつも何も喋らないが気配はある。だが、今日はその気配すらない。
空席のそこを見つめクロコダイルは眉をひそめた。
物足りなさを無意識に感じてしまった自分を鼻で笑った。
「ボス」
「……ミス・オールサンデーか……」
「あら、誰を期待していたのかしら」
口元を隠しながら面白そうに笑うロビンにクロコダイルは舌打ちをした。
「くだらねぇこと言ってると、殺すぞ」
「あら、ごめんなさい」
飄々と応えるロビンにクロコダイルは苛立ちが募る。本来、自分にこんな態度をとる輩は即刻消すのだが、まだこの女は利用価値がある。
じゃあ、あの女を殺さない理由はなんだ?利用価値なんてさらさらないじゃねぇか。ましてや、あの白ひげのクルーだ。
「そう言えば、あの子。朝から具合が悪かったみたい」
知っていたかしら?という風に首を傾げるロビン。クロコダイルにも、思う節があった。
「さっき部屋を覗いたら血を流して倒れてたわ」
金属の触れる音がしたとクロコダイルがいたはずの席を見れば姿が消えていた。
「あらあら、随分ご熱心なこと」
残された砂の匂いに語りかけ、ロビンは満足そうに笑みを溢し、ゆったりとした足取りで扉へと向かった。
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