07
声がする。朦朧とした感覚に誰かが誰かを呼ぶ声がした。
何を言っているのだろう。誰を呼んでいるのだろう。次第に感覚は研ぎ澄まされ、あぁ私かと一人納得した。
重たい瞼を抉じ開ければ美しい顔が一番に視界に入ってくる。
「……ロビン」
「その名前は呼ばないで、風使いさん」
だったら、私も風使いさんだなんて呼ばないでほしい。
「なんか……血の臭いがする」
嗅ぎ慣れた鉄の臭いに鼻をスンスンと動かせば訝しげな表情になる。
ロビン、怪我でもしたのかな?
「あなたの血よ」
「え、私?」
私ってば怪我なんかしたっけ?
「顔色が良くなかったのは女の子の日だったからのようね」
「女の子の日……あぁ」
生理か。あぁ、そうだ生理がきそうで、体調不良だったんだ。それで、カジノを引き上げてベッドイン……あ。
「やばっ」
慌てて起き上がれば下腹部に鈍痛が走る。
「……ッ」
そして振り返るようにシーツを見れば案の定、真っ赤な血が付いていた。
最悪だ。
溜め息を溢せば、だんだんとまた腹痛が強くなる。
もう、いーや。どーせ、薬ないし。暫く私使い物にならないし。もー、シーツが汚れてよーが気にしない。とにかく寝たい。
横になろうと、ふらっと体の力を抜けば何処からか生えてきた腕に阻まれる。
「ロビン?」
私を寝かせない気か?申し訳ないが、まじで生理中の私は瀕死状態に陥るのだが。
「着替えましょう。その間にシーツ交換を頼むわ」
「無理っす。動けません」
目を閉じて訴えれば、不意に体が浮いた。いつもと違う浮遊感。
「うわっ」
床から、にょきにょき生えるロビンの腕に運ばれていく。
怠すぎて反応も薄くなってしまった。運ばれた先はバスルーム。すでに湯が張ってあり、まさかと思った時にはポイッと浴槽に放られた。
「ぶふっ!」
な、何てことを!
危うく溺死しそうになった私は、無駄に広い浴槽で力の入らない体を仰向けにし天井と向かい合うこととなった。
服を着たまま浮いているのは妙に気分が落ち着いた。
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