06
雲一つない空を、ふよふよと漂っていれば、下の方から呼ばれた気がした。
目を凝らせば信号トリオが手を振っている。
「なーにー?」
「first name!降りてこいよー」
イエローの言葉に仕方がないと船に降りた。今日の空中散歩はこの辺で終わりか。
「よっと」
「おかえり、first nameちゃん」
「ただいま、グリーン」
「お前なぁ、親父と話終わったら真っ直ぐ戻って来いよなー」
レッドに軽く頭を叩かれ、そのままぐしゃぐしゃされた。
「むぅ、バンダナが崩れたー」
「お前の荷物、部屋に運んどいたかんな」
「レッド、ないすっ!」
ぐっ、と親指を立てれば溜め息を溢された。何故だ。
「まぁまぁ、レッド。取り合えず、鍛練でもしよーぜ。そのために早く戻って来たんだろ?」
「あ、そうだった」
イエロー良いこと言った。すっかり忘れてたよ。
「よし、やろう。すぐさまやろう。今日こそイエローに、すてごろたいまんで勝つ」
『無理無理』
三人に揃って言われてしまい、さらに丁度擦れ違ったクルーにまで言われてしまった。
「勝負!」
「よっしゃあ!」
今日も空の下、汗水垂らし強さを求める。
でも、頭にチラつく新な迷い子。どうしようもない不安と苛立ちが私を黒く黒く支配していく。
「おらおら、どうしたfirst name。今日はまだ一発も決まってないぞっ」
「むぅ!」
心の乱れが現れているようで、確かに今日は調子が悪い。
仕掛けても仕掛けても、あっさりかわされてしまうばかり。さらに言えば風にも乗れない。まるで向かい風に吹かれ動きを阻まれているような感じだ。
そんな私は苛立ちが募る募る募る。そしてキレた。
嫌な風が吹く。
「……ッ」
「first nameっ!?」
一瞬、身を包んだのは黒い風。まるで暗雲を呼ぶような漆黒の風。
今までにない感覚に背筋が凍った。呑み込まれてしまうかと思った。
無理矢理、風を抑え込んだ反動で私の体は自ら甲板へと叩き付けられた。
どうして?風まで私を置いてくの?
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