02
それは、ある晴れた日のことだった。今日も一段と心地よい風が頬を撫でる。
一週間ほど停泊していた港を出航する日。私はトリオたちと最後の買い物をして船へと戻った。
これっぽっちも疑わないで。私の物語が今日この瞬間までなんて知らずに。
「あ?何か騒がしいな」
レッドが船の甲板を見上げながら言った。
騒がしいのなんて、いつものことじゃないか。
私は買い物疲れから早くシャワーを浴びてベッドに潜りたかった。太陽が天辺にあろうが関係ない。
「ねぇ、梯子がないよ」
「げっ、まじだ」
グリーンの言葉にイエローが顔をしかめた。
「よし、私に任せなさい」
『げっ』
三人の顔から血の気が引いた時、すでに私は能力を発動していた。
「風、龍登」
登る風の道に三人を巻き込み、一気に甲板へと上った。
「ぐえっ!」
踏んづけられた蛙みたいな声をだしたのはイエロー。何度やってもイエローは、これが苦手なようだ。
「へたくそー」
「てめぇ……」
「あれ?何か集まってるみたいだよ?」
「え?」
いつもの、じゃれ合いが始まろうとした時、グリーンの声に反射的に顔を向けた。
そして、声を失った。
円を描くように出来た人垣。私から一直線に、まるで誰かがわざと開けたように隙間があり、それを視界に入れることができた。
「first name、やっと帰ってきたかよい。ちょっと来てくれ」
マルコの安堵した顔。
私の体は何故か拒絶した。振り払ったマルコの手は空をさ迷う。
「……やだ」
「first nameー!こっち来いよー!」
サッチの明るい声が耳に届く。それでも私の体は動かない。それでも私の視線は外れない。
「どうした、first name?」
私の異変を察知したレッドが肩に手を置いた。
どうした?どうしたも、こうしたもないよ。
だって、どうして、なんで?
あれが、ここにいるの?
人垣の中心にいたのはセーラー服に身を包んだ女子高生だった。
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