07
あぁ、疲れた。久々に走ったわ。
コキコキと首を鳴らして「どっこいしょ」と紙袋をカウンターに置いた。
「店長、ただいま戻りましたー」
はらりとフードを外せば店長のホッとしたような顔。
「おかえり、first nameちゃん。遅いから心配したよ」
「あははっ、すんません」
「first nameちゃん!」
「うおっ」
エプロンの紐を後ろ手で結んでいたらロクさんの顔がドアップで入ってきた。
それなりの顔だが、正直タイプじゃないからキツイキツイ。
「今、サブさんが二本向こうの通りで海賊が出たって!大丈夫だった!?」
「あ、はい。この通り」
ほれ、と両の手の平を見せてみる。
キャンキャン喚くロクさんをスルーして手を洗う。
それにしても残念だ。やっと会えると思ったのに……。運が悪い。
無意識に溢してしまう溜め息。店長が心配してくれる。何だか申し訳ない。
「疲れただろ?少し休んできていいよ」
「いえいえ、こーみえて体力ありますから」
無駄に鍛えましたから、はい。最近、鈍っちゃいそうで心配です。サンドラ川に生息するカンフー何とかと、戦ってこようかしら。
「first nameちゃーん。ジョッキ10個よろしくー」
「はーい。って、さすがの私もいっぺんには無理ですから」
今日も客足は途絶えることなく繁盛しています。
夜、月明かりの射し込む部屋。私は酒場の上で住まわせてもらっている。
家族のいない一人暮らしは本当に久しぶりで心細くて心細くて仕方がない。昔の私だったら生きていけないだろう。でも、能力を持ち、鍛えた結果、そして経験。それが今の私の精神を支えてくれている。
部屋の隅に置かれた仲間の印が刻まれているベルト。そして今まで共に戦ってきた銃とナイフ。
身に付けていないことに慣れてしまうのが怖い。
いつの間にか携帯とヘッドホンの代わりになってたんだ。
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