06
泣くな泣くなとボクくんの髪の毛を、ぐしゃぐしゃ掻き回す。
「ちょっと、これ持っててくれる?」
「……」
「ママ、助けてやるから。男なら涙ぐっと堪えて、堂々と待ってろ」
「……うん!」
紙袋をボクくんに押し付けて、いざ参らん!
「あ?なんだ、お前」
人垣から出てきた私に海賊たちが視線を向ける。あぁ、阿呆面ばかりだな。イケメンがいないよ。
「おい!」
「あ、悪い悪い。残念な顔ばかりだなって思ってた」
「聞いてねぇよ!」
「ぶっ殺すぞっ!」
弱い犬ほど、よく吠える。昔の人も上手いこと言ったもんだな。
「さて、海賊さんたち。今なら見逃してあげるが?」
「あぁ?てめぇ、何さm……」
「あー、そうですか。はい、分かりました。では、さようなら」
風が舞った。ねぇ、観てますか?あなたと何て似通った技でしょう。
巻き起こる竜巻に海賊たちは情けない叫びと共に吸い込まれていく。
「ボクくん、ありがとー」
砂嵐化したそれに背を向けボクくんから紙袋を受けとる。
砂嵐が消えた時、そこには海賊もマントを着た人物もいなかった。
「やべっ、けっこう遅くなっちゃった」
店長に怒られるっ、と全速力で駆け出した。
一方、一足遅く現れたクロコダイルとペル、チャカ。
クロコダイルは葉巻をくわえ高みから見下ろしていた。何も言わぬ顔でコートの裾を靡かせれば砂となり消える。
「国王に報告せねば、か」
「国を護ってくれる者が増えるのは良いが……」
自分たちの仕事が無くなってしまうと苦笑したペルとチャカだった。
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