10
本日、夜間見張り番。と言ってもやることがない。大抵トリオと同じ日なのだが、たまたまズレてしまい今日はオジサンクルーたちと一緒。
甲板の縁に寄り掛かりながら満開の星空を見つめているしかない。この数時間で何度目かの流れ星をみた。
この世界にきた頃は流れ星に感動していたが、さすがに今はない。順応していくとは、こうゆうことを言うのだと改めて思わされる。
「おーい、first name。一周してこーい」
「うぃーっす」
呑気に酒盛り中のオジサンに言われ素直に腰をあげた。
モビーは大きいから甲板を一周するにも時間が掛かる。私が見張り番している時に異常なんか起きたことがないから私はポカンと口を開きながら空を仰ぎスローペースで歩いていた。
すると突然、すんごい音と共に目の前に何かが横切った。
すぐに理解した。少年が白ひげを襲い返り討ちにあったのだ。
私の中で、何かが切れた。
「てめぇ、何してやがるっ!」
「なっ!?」
私のナイフとエースのナイフが交じり合う。突然、斬りかかった私にエースの瞳に動揺がみられる。
「な、何だお前!」
「何だは、こっちの台詞だっ!白ひげに、船長に手ぇ出す奴は許さない!」
「……ッ」
「first nameっ!落ち着けっ!」
先ほどの音で何事かと集まって来たクルーたちに羽交い締めに合い、エースと離される。
「はーなーせっ!」
「おいおい、お前first nameをキレさせんなよ。マルコ隊長に、どやされるじゃねーか」
「全くだ。おい、小僧。親父に挑戦すんのは、まぁ見逃すが。first nameには手ぇ出すなよ」
至って冷静なオジサンクルーたち。何だ何だ、白ひげに挑む身の程知らずなんてぶっ飛ばせ。
「first name、お前もだ。危ねぇことすんなってマルコ隊長に言われたばかりだろ?」
「だって!」
「だってじゃねぇ。正直、お前の実力じゃ負けるだろーが」
「……ッ」
分かってる。分かってるよ。私が弱いなんて、エースに敵わないなんて、そんなのとっくの昔から知ってるよ。
でも、悔しい。
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