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08



お箸からポロリとプチトマトが落ちた。



「へ?」


「なんだ、first name知らなかったのか。もう出たころじゃねぇの?」



皿を片付けながらチラリと掛け時計を見て言ったサッチ。


私は箸を叩き付けるように勢い良く立ち上がった。




「うおっ!」


「私ちょっと行ってきます!」


「あ、おいっ!もう無r……って聞いちゃいねーよ」



後頭部を掻きながら溜め息を吐い時、私は既に風になっていた。


聞いてない。聞いてない、ジンベエさんが、今日帰っちゃうなんてっ!


甲板に出ると既に船は遠く。皆、手を振るのも止め、ちらほらと人が散り始めていた。



「おぅ、first name。遅かったじゃn……って、おい!」



声を掛けてきたマルコをスルーして、そのまま船に向かって飛ばされる。



「じーんーべーさぁーん!」


「ん?」



力いっぱい叫んだら包帯だらけの大きな青い体が振り返った。


船の縁に、すたんと着陸する。それでも目線は私が見上げなければならない。



「ちょっとジンベエさん、私に会わずに帰るとは、どゆこと!?」


「first name、わざわざ飛んできたのか」


「あったりまえじゃん!今度会ったらジンベエ鮫の背中に乗せてくれるって言ったじゃないですか!」


「おぉ、そうだったそうだった」



ちょっとジンベエさん笑い事じゃない!



「すまんが、first name。見ての通りわしは今こんな状態。次に会う時まで待っていてくれんか」


「むぅ」


「……」



困った顔をされたら仕方がない。諦めるしかないじゃないか。



「うむ、致し方がない。じゃあジンベエさん、また!」


「あぁ。first name、あまり親父さんに迷惑を掛けるでないぞ」


「あーい」



ひゅるりと下半身を風にして空に舞い上がる。


いつの間にかモビーの姿は豆粒に。



「やばっ!」



私は慌ててモビーに向かって風に乗った。


戻るとマルコに、ぐちぐちと説教されたのは言うまでもない。



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