03
その夜、大海原にポツンと浮かぶモビーの上は騒がしかった。
な、なんだこれ。
私は一枚の紙切れを握り締め体を震わせていた。
いや、ありえないだろ。どう考えたって、ありえないだろ。
「宴だぁあああああ!」
ちょっと待て、そこ。宴の意味が全く分からん。嬉しいことなど1ミリもないじゃないか。
「やったな、first name!」
「おめでとう!」
「そうか、やっとお前も……ぐすっ」
いやいやいや、レッドくんグリーンくん、そしてそこで涙ぐんでいるイエローくん。
まじで、や め ろ。
紙に描かれた見覚えのある顔。見覚えあるに決まっている何故なら、それは私だから。
バンダナで隠れた目元。唇は弧を描いている。良かったのか悪かったのかは分からないが男女判別不能な感じ。
写真の上に記されたWANTED。そして下には懸賞金と私の名前。
「風来のfirst nameだってよい。」
何だマルコ。その爽やかな笑みはなんだっ!
あーあ、私もとうとうお訊ね者か。
「……死んだな」
そして私は両腕を掴まれ背を押され、どんちゃん騒ぎの中心へと投げ込まれた。
「まじで無理っす!これ以上飲めません!」
「ギャハハハハ、もっと飲まねぇと胸でかくなんねぇぜ!?」
「そーだそーだ!おめぇ、それじゃー本気で男と変わんねぇよ!」
「余計なお世話だオッサン。セクハラで訴えんぞ」
酔ったオッサンたちは質が悪い。絡みが、うざい。
「それにしても……微妙な懸賞金の額だねぇい」
ぐびっとウイスキーを飲みながら手配書片手に鼻で笑うマルコ。
なんだ馬鹿にしてんのか私にしたら充分だ。充分すぎる。てか自分で自分を売って手に入れたいぐらいの金額だし。
「2800万ベリーかぁ」
そこ、溜め息吐くんじゃないっ!
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