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09



慌ただしいのが来た。



「first nameっ!」


「あ、マルコ隊長ー」



血相抱えた顔で浜を走ってきたのは我が隊の隊長であるマルコ。最近、過保護な父親っぽくなりつつある。



「大丈夫かよい!海に落ちたって……」


「大丈夫っすよー。ベンさんに助けて頂きましたからー」



ひらひらと片手を振ればマルコの顔が不機嫌に歪んだ。



「あ?ベン?」


「よぉ、マルコ」



あぁ、ベン。なんて爽やかなの。



「お前んとこの娘は本当にじゃじゃ馬だな」


「うるせーよい」



じゃじゃ馬呼ばわりですか。あなたのところの娘だって、じゃじゃ馬じゃないんすか。



「first nameちゃん、私はじゃじゃ馬じゃないからね」


「嘘はいかんよ、嘘は」


「むっ、嘘じゃないし。ね、ベン」


「フッ、どうだかな」



ニヤリとからかうような笑顔に、ななちゃんがムキになる。船上生活が容易に想像することができた。


きっとベンは赤髪海賊団の、お父さん的ポジションなのだろう。



「それにしても、first nameちゃん。もしかして……」


「悪魔の実の能力者か?」



ななちゃんの言葉を良いところ取りしたベンさんは、ななちゃんに小突かれていた。



「うん、そうだよ」



日差しのお陰で段々と力が戻ってきた私は、ゆっくりと上半身を起こす。マルコ隊長が気遣って背中を支えてくれたから「ありがとうございます」と頭を下げた。



「私たちでも能力者になれたんだ……」



ポツリと思わず溢してしまったんだろう、ななちゃんの言葉に私は苦笑し頷いた。


それは私も思っていたことだ。まさか、異世界人の私に適応するとは思わなかった。まぁ、コントロールは、些か大変だったが。



「ねぇねぇ!何の実!?」



興味津々に身を乗り出して聞いてきたななちゃんにピシャリと言い放つ。



「いくら友達でも敵船のクルーに手の内晒すわけないじゃん」



体中でショックを表現したななちゃんに少し同情したが、ベンに慰められてたから同情なんて言葉、綺麗さっぱり消え去った。



「まぁ、そんな落ち込むなって」



手をヒラヒラさせて、気にすんなって言えば「お前が言うなよい」ってマルコにつっこまれた。



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