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08



あー、冷たくて気持ち良いなぁ。


空を見上げれば、ふよふよと気持ち良さげに雲が浮いている。


風も気分が良さそうだし。本当、良い天気だぁ。


気分が良くて調子に乗ってしまった。気付いたら海の沖に向かっていた。波は、まだ膝ぐらいまでだが私には十分だった。


力が抜けていく。力が海に奪われていく。


あぁ、ダメだ。そう思った瞬間、足の力は無となり膝から崩れ落ちた。


海に下半身が浸かる。



「ハァハァハァ……ッ」



やばい。また、あの時みたいに……。ゾクッと背筋が凍った。


深く深く、そして真っ暗な世界に堕ちていく感覚。もがいても、もがいても体に力が入らないから堕ちていく一方で、助けと何度叫んでも口から出てくるのは泡ばかり。



「誰か……誰かっ!」



気付いたら海の中に体は倒れていて、すがるように叫んでいた。


怖い怖い怖い、力が入らない。怖い怖い怖い、ねぇ、私の声届いてる?


ねぇ、どうして海は私を嫌うの?



「おい、大丈夫か?」



誰かに抱き上げられた。海水にたっぷり浸かってしまった私は、ぐったりしていてされるがまま。返事なんかできるはずもなくて、ちらりと瞼を開ければ……。



「べ、ベン……ベック…マン」



軽々と私を姫抱きしたベンは、ざばざばと音をたてながら浜へと向かった。



「first nameちゃん!?」



ちょっ、今は高い声は遠慮したいよ、ななちゃん。



「この馬鹿first nameっ!」



馬鹿言うなイエロー。



「無事か?」



まぁ、なんとか。



「first nameちゃん、大丈夫?」



グリーンの優しさが骨身に染みるわー。


浜に、そっと下ろされるも、ぐったりしたまま横になる。乾くまでしばらくこの状態だな。



「嬢ちゃん、大丈夫かい?」


「え」



何故に女だと?


ポカンとする私にレッドがバンダナ取れてると教えてくれた。頭に手をやれば確かにない。



「やっちまった」



けっこう、お気に入りだったのに。



「ほら」


「あ、」



隣に腰を下ろし、煙草をくわえたベンが私に差し出したのは流されてしまったはずのバンダナ。



「ついでに拾った。それに、抱けば男か女かぐらい分かるさ」



何だ、この人。抱かれてないはずなのに、何故だか抱かれた気分になってしまう。



「ななちゃん」


「ん?何」


「ベン様に、ずっきゅーんてきちゃったっぽい」



ポワーンとしたまま変なことを口走ってしまったらしい。



『ブッ!!』



サッチ特製ジュースが赤黄緑から、その色彩通りに綺麗に吹き出された。



「な、なに言ってやがんだっ!正気かっ!?正気なのかっ!?いや、正気じゃない。お前は正気じゃない!なんたって海に入ったんだからなっ!」


「うぷっ」



肩を掴み、がくがくされる。


イエロー、まじやめて。まじ吐く。きーもーちーわーるーいー。



「おい、やめとけ。イエロー、お前の言った通り、first nameは今正気じゃないのさ」


「そうか、そうだよな。レッド……グズッ」



なんなんだお前ら。何も言わずタオルと飲み物を持ってきたグリーンを見習え。



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