03
きっと、たくさん私が私のことを皆に話さないように、ななちゃんもたくさんの秘密を抱えているのだろう。
でも、それは仕方ないこと。自分自身を知ってもらうよりも自分がこの世界に適応していくことが先だったから。
「昔話をしましょうか」
ちょうど良いタイミングにつまみと酒を持ってきたサッチから、それらを受け取り私はゆったりと胡座をかき直した。ななちゃんも同じ格好をし、お互いクスリと笑う。
「女捨てたね、ななちゃん」
「それは、first nameちゃんでしょ」
穏やかな雰囲気の私たちを見てシャンクスとマルコもその場に腰を下ろした。
「first nameちゃん、ありがとう」
「別に、タイミングは大切だからね」
「確かに」
苦笑したななちゃん。きっと話すに話し出せなかったのだろう。
「私とななちゃんは同じ学校……学校って分かる?」
「大丈夫じゃない?」
「まぁ、その同じ場所で同じことを学んでいたわけよ」
「そうそう、実につまらないことをね……」
「何を学んでいたんだよい?」
「まぁ、マルコ隊長そこは置いときましょうよ」
マルコのグラスに酒を注ぐ。ついでにシャンクスにも注ごうと思ったら「それ以上はダメ」とななちゃんに止められた。
「そこで私とななちゃんは同じ存在だった」
「同じ存在?」
首を傾げたシャンクス。
「この世界と違って、私たちがいた世界はとても生き辛い場所だった。私たちにとっては、だけど……」
遠くを見つめる視線。きっと、あの世界を思い出しているのだろう。
「私もななちゃんも別々の人生を送ってきたんだけど、辿り着いた……まだ人生の途中だったけど、なんとなく辿り着いた場所が一緒だったんだと思う」
「うん。そこにいるのに、ちゃんと存在していたのに私たちの周りだけ色が違うの……どこで間違っちゃったんだろね」
「間違いじゃない。私たちは何も間違ってない。ただ、ただ、私たちには合わなかった。そうでしょ?だから私たちは、あの世界を捨てた」
「……first nameちゃんは知ってる?あの世界の私たちがどうなったか」
「……」
知らない。でも分かってるよ。なんとなく、私たちは……。
「私たちは死んでるの」
風が吹いた。頬撫でる優しい風が。
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