賢者の石 05 「First name、落ち着け」 「セブは分かんないだよ!いきなり見たこともない場所にいて、知らない人ばかりで、言葉が通じない恐怖が!孤独感が!」 怖い、怖い、怖い。 私は自分の腕で自分を抱き締め絞り出すように震えた声を発した。 「セブ…怖いよ」 「First name、軽率な行動をした。すまない」 私は首を横に振った。 「ごめんなさい…お仕事中に邪魔しちゃって…もう、行くね…」 涙を袖口で拭い立ち上がると腕を掴まれた。 そして、そのまま引っ張られ再びソファーに腰を沈める。 「紅茶を淹れる。飲んでいけ」 「…ありがとうございます」 私が微かに微笑むと彼は紅茶を淹れに立ち上がった。 あー恥ずかしい。 私はソファーの上に足を上げ抱えるように縮こまった。 所謂、体操座りだ。 人前で泣いたのなんて何年振りだろう。 あんなに取り乱しちゃって情けない。 深々と溜め息を吐いていると良い香りが漂ってきた。 目の前に置かれた夏休み中に私専用となったティーカッブに手を伸ばす。 あぁ、やっぱりセブルスの淹れる紅茶が一番だ。 隣に座り同じ様にカップを口に運ぶセブを見て何だかやっとホッとした。 「ねぇ、セブルス」 「…」 「私のレポート、字が読めないから0点ってことはないよね」 「心配するな、皆どの教師も杖一振りで翻訳可能だ」 がくーっと肩の荷が降りた。 そりゃそーか。 いったい何を心配していたのだか…。 ホグワーツの教師の凄さを忘れてたよ。 ←→ [戻る] |