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白昼夢
1

玄野透夜は夢を見ていた。現実とはかけ離れた風景の中に、一人寝そべっている夢を。紫色の空には幾多の星々が浮かび、時折蓮の花がくるくると回りながらゆっくりと落ちてくる。地上では現れたと思えば儚く消えていく、白い光のような蝶が舞い踊っていた。彼は静かに起き上がると、辺りを見回した。
目に映るのは真っ白な花畑と、自分の前を横切る蝶々たち。それだけでも十分美しい景色が完成されているが、彼にとっては一つだけ足りないものがあった。
人は日記でもつけていない限り自分が見た夢のことを忘れてしまうが、透夜はその夢をはっきりと覚えている。彼はこの風景を何度も夢の中で繰り返し見てきたのだ。だから、その中に足りない何かがあるのも知っていた。
今日はもう姿を見せないのかと思い、透夜が眠りにつこうとしたその時、突然彼の目の前が真っ暗になった。透夜は自分の顔の近くを触れ、誰かの手が自身の目を塞いでいることを確認する。背後からは「だーれだ」と楽しそうに言う声が囁いた。
透夜はそんないたずらに少し驚いたものの、冷静な声で「上城雪月」と自分の視界を奪っている人物にその名を告げた。

視界が開くと透夜は一つため息をついて後ろを振り返った。後ろにいたのは彼よりも何歳か幼く見え、少女と言っても通じてしまいそうな美貌を持つ少年である。透夜が持つ黒髪とは真逆のシルクのような銀色の髪はここではさらに輝きを増し、空と同じ紫色の瞳はどこか怪しげな雰囲気を纏っていた。
「ちょっとは驚いてくれたっていいのに」
その少年、上城雪月は拗ねるような態度で呟いた。


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