[携帯モード] [URL送信]

Long
愛する罪には愛されない罰W sideY
それから1ヵ月たった。元々お互い忙しさにかまけて、話をする機会もなかった。
守護者の定例会の後、慌ただしく自室に戻るアイツの背中を、俺は座ったまま見送った。
アイツはほとんど本部詰めの様子で、寝ているのかも心配だった。

「また、声掛けそびれたって感じだね」
『雲雀』
「あの子もくだんない意地張るよね。昔からだけど」
隣の席だった雲雀が、つまらなそうな声で話しかけてくる。
「たまに並盛から帰って来てみたら、こんな面白いことになってるなんてね」
『そういう割りに、つまんなそうなのな』
「当たり前でしょ?あの子へこんでると、うっとうしいし」
雲雀なりの心配か…。
「うっとうしい位群れてるのがなくなるのは嬉しいけど、あの子鬱入るか、煩くなるかどっちかだし、誰も止められないし」

確かに。昔からの性格を考えれば、どちらかだろう。どちらにしても、止めてやれた自分が側にいてやれないのが、歯がゆい。

『わりぃな』
「謝られる必要ないし。そう言えば、君、来週から、並盛?」
『おう』
並盛の地下には雲雀の研究施設が設営中で、その後ボンゴレの日本支部も造られる予定だった。
「来るのはいいけど、面倒掛けたら噛み殺すよ」
『分かってるよ』
相変わらずの言葉に苦笑いしか出ない。

正直イタリアに来てから、並盛には数える程しか帰っていなかった。楽しみではあるが、そうも言ってられないのが多分現実で。
後2、3日しか無いというのに、荷造りすらできていない。元々、2人の家に置いていた荷物すら、取りに行っていない現状だ。

『荷物準備しねーとな』
「早めにね。パスポート忘れたとか、洒落にならないから…」
そう言った瞬間、懐かしい並中校歌が流れる。
「あ、うん。…終わった。下?着いたの。…うん。行くよ、じゃ」
『迎え?』
「そ。ほんと、久々に来ると振り回される」
席を立つアイツの表情は、言葉と裏腹に、心なしか楽しそうで。
『じゃ、並盛で』
「…本当に面倒」
苦笑しながら見送る俺は、


何故か、無償にここを離れがたかった。


[前へ][次へ]

5/55ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!