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Long
Buon Compleanno!
『隼人』
「あ?」
『毎年恒例。今年の』
「おう(笑)」 
日付は9月8日を刻んでいる。後30分もすればオレの誕生日。手渡された箱を開けてみれば、今年もピアスが光る。今年のは…
『グリーンサファイヤ。後、今年はこっちもオマケ』
もう一つ箱を手渡された。開ければ、よく見ると、同じ石が内側に入ったリング。
『んで、これで3点セット。でもオレ用なのな』
そう云いながら、自分の首にかけたペンダントを、見せてくる。

「今年は張り切ったな(笑)」
『たまたま(笑)』
でも、ちゃんと見てみれば、オレがいつもオーダーしてる店のデザインと、雰囲気が似てる。
「いつものトコ?」
『だってオマエ、今あそこのしか着けないじゃん?』
「確かに(笑)」
それにしても、サファイヤか…。しかもグリーン。
「…探させたのかよ?」
『…少し時間かかった。間に合うか、多少心配だったのな(苦笑)』
「…だから、張り切り過ぎだって云ってんだろ(笑)」

オリーブグリーンの小さな石。だけれど、自分の為に選んでくれたと思うと、嬉しい。
『だってさ…10年記念』
「…そんな経つか…」
『経ったな(笑)』
出会って、付き合い始めて、10回目の誕生日。
正直こんなに続くとは、思えなかった。
初めから、性格もなにも合ったもんじゃなくて、喧嘩ばかり。
元々、産まれた時から環境が違う2人。こんなに長く続くなんてな。

「てか、よくわかったな?」
『ん?』
「誕生石」
『あぁ』
「柄でもない(笑)」
そんな、知識有るわけもないのにな(笑)中学から勉強嫌いで、こんなこと覚えてるなんて。
『前に聞いてさ』
「誰にだよ」
『オマエの姉貴。…何、妬いてんの?』
「…別に」
誰が妬くかよ、姉貴なんかに。

『でもさ、サファイヤっていろんな色あんのな』
「ルビーだって親戚みたいなもんだ」
『らしいな。オーダーの時教えてもらった』
子供みたいに、楽しそうにしてる。そんなところは変わってない。
「そうか」
「てか、オマエ。ダイヤじゃん?誕生石」
『そーなのか?』
「他人の覚える前に、自分の調べろよ(笑)」
『だって別に知らなくて、困らないだろ?』
「確かにな(笑)」
『オレはオマエ以外、興味ねーし』
「そうか?」
『そう!』
「…恥ずかしいヤツ…」
昔は野球しか興味なかったくせに(笑)ちょっと洒落たこと云うようになりやがって。そんなとこばっかり大人。

『恥ずかしくねーよ。ホントの事だしな』
「…」
『お、時間』
「今外すから待ってろ」
『おう』
「…準備いいぞ」
『ん』
『ほれ。ついた』
「…さんきゅ」
『おめでとう、そしてありがとう』
そういうと指輪もしてくれる。ゆっくり抱き締めてくる胸によりかかる。

『今年も1番始めに云えた』
髪を撫でてくれる手が、心地良い。
目の前に光るペンダント。
「そういや、オマエのも同じ石、入ってんじゃん」
『最近なかなかあえねーしさ。ちょっとした気休(笑)
オマエの目の色だし、誕生石だし』
「…」
『多少、一緒に居れる気になるかなって』
顔を上げて見つめれば、苦笑される。そんな、寂しそうな顔するなよ。らしくないだろ。
昔よりは、一緒に居る時間は少ない。その分密度は濃くなっていると思う。
「ばーか。今だって一緒に居るし」
『そーだよな。オレ子供みてーだな(笑)』
「はなっから、オマエはおっきな子供だろ?」
『おっきな子供でいいよ(笑)』
「…まーな」
来年、再来年。いつまで一緒に居れるかわからないけど。

次のヤツの誕生日には、ダイヤのペアアクセでも買ってやるか。

そう考えながら、オレはヤツを抱き締めて感謝のキスをした。

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あきゅろす。
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