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Long
愛する罪には愛されない罰X sideG
アイツが、並盛に旅立った。

しばらくは顔を合わせる事もない。声も聞くこともない。

それなのに、アイツの荷物は、俺の家にまだ我が者顔で転がっている。
合鍵も、取り上げる事ができなかった。


元々はイタリアに来る時に、アイツが転がりこんだまま、2人で住むのを前提に決めてしまった家だ。一人で住むには広すぎる。

並盛へ行く時に、荷物を引き取りにこさせるべきだったと、合鍵を返してもらうべきだったと、色々考えてたが、そのまま旅立ってくれたことに、嬉しく思ったのも事実。

「まだ、諦めつかねーのかよ…」

一番整理がついてないのは、自分なのだ。
多分、アイツが色々忘れて、別の人を選んだとしても、自分は無理なんだろうと、頭の片隅で思った。


多分手遅れなのだ。

無理しようが、なんだろうが、忘れる事なんか出来ないのだ。

出逢った頃は、喧嘩ばかりで、気にくわないヤツで。何時からか、目で追う回数が増え、恋愛対象になり…。告白こそされたが、多分そういう対象で見始めたのは、自分の方が先だったと思う。

それから、何回も喧嘩して、その度に俺が宥められて。

「ゴメンな…」
ベッドに横になったまま、手にとった、写真に呟く。写真の中でも、俺は機嫌が悪そうで。肩を組んで来るヤツに対しても、笑顔すらない。
嬉しくても、素直に成れない自分を心から後悔した。
「何時も怒ってばっかで、素直じゃなくて、褒めてやりたくても、出来なくて。ホント、ゴメンな…」

今更なのに。此処まで連れて来てしまった事にも後悔する。
口にこそしなかったが、ホントは、野球を続けて欲しかった。アイツは高校生になった時、甲子園がゴールなんて言ってたけど、中学の時は、プロになると言ってたはずで。

甲子園で、準優勝した時に、
『これで、やりつくしたよ』

って言いながらも、寂しそうに笑って居たのを覚えてる。


「ホームラン、アリガトな」

予告してくれた通り、ホームランも打ってくれた。やはりそれにも、感謝の言葉は出なかった。褒めもしなかった。

「最悪だったな。俺みたいの、好きになってさ。早く、イイヤツ見つけろよ…」
流石に、野球は取り戻せなくても、それ以外は取り戻せるかもしれない。

「俺は…もう手遅れだけどさ」


写真を、サイドボードに置くと、目を閉じる。
途端に眠気が襲ってきて、疲れを思い知らされる。

久々に、家に帰って来たため、感傷に浸ってしまったのだろう。

明日からは、また仕事漬けだ。しばらくは帰って来れないだろう。
今度の仕事は同盟締結の仕事。
骸からの情報と自分が調べた情報を加味して、締結すべきかどうかを考えなければいけない。勿論、決定権はないけれど、あらゆるケースを出した上で、報告しないと、上層部が、選択を見誤る場合がある。それだけ、責任は重い。
まして今回の相手は‥。

とにかくひっかかるのだ。
幼少期の嫌な思い出を思い出させる。自分の家の関係者であったのは、調べがついている。その上で、
母親の死に関連していそうな事も…。
それを知っていて、敢えて、ボンゴレを利用しているとすれば…。

今は、その仕事だけを考える。
そうしなければならない。
それだけを考え、自分の事は置き去りにしなくてはいけない。


だから…しばらくは、お前の事も思い出さないようにするよ。

「今日だけは、許してな。山本…」

写真を再度手に取り、写真にキスをする。

「夢でもいいから、逢いたいな…」

そして、もう一度目を閉じた。


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あきゅろす。
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