Long 愛する罪には愛されない罰\ sideY 目が覚めた瞬間、自分の家に居ることに、酷く安堵している自分がいた。 隣にいつも居るヤツが、不在なのは、長期任務などでよくある事だった。 今回も、そんなもんだ。 そう言い聞かせると、ベッドから起き上がる。 寝る前に、ツナには、獄寺からの情報が残っていたのを連絡済み。午後からの会議前に報告しに行く約束は取り付けた。 『もう少しだかんな。待っててな』 ここには居ない、アイツに届けばいい。気持ちだけでも、側に居てやりたい。 シャワーを浴びて、クローゼットからスーツを出す。誕生日にオーダーで作ってくれたスーツ。 「オマエさ、肩幅あるし、ダブルの方が良くね?」 『そうなのか?』 「ダブルなら、多少、年行っても着れるし。つかオマエすぐスーツ崩すからな。ダブルん時は、ちゃんと崩さねーで着とけよ」 『ちゃんと着たからな。怒るなよな』 今日はネクタイだってしたのな。 なんか、誉めて欲しい子供みたいだと、笑いが込み上げる。 昨日準備しておいた、獄寺のデータが入ってるメモリーと、少々の荷物を持つと部屋を出る。 『んじゃ、行ってくるな』 振り向いて、いつものように、声をかける。 「行ってこい」 その声を、取り戻す為の第一歩を踏み出した。 「珍しいですね、ダブルのスーツなんて」 丁度、ツナへ報告が終わり、部屋を出たところで、声をかけられる。 『…ランボか』 「良いですよね。肩幅ないと、そのタイプ厳しいし。獄寺氏のチョイスですか?」 『まーな』 良いですよね。なんて呟かれて、内心嬉しくなる。 会議室までは一緒だし、何気ない会話を続ける。 「山本氏」 『ん?』 「色々吹っ切れた顔してますね」 『…まーな』 まだまだガキの癖に、鋭いヤツ。 「早く、見つけましょう。あの獄寺氏の怒鳴り声無いと、調子狂います」 『そだな』 聞いた?獄寺。心配されてるよ。 アホ牛に心配されるなんて、終わりだって言いそうだけどな。 「というわけで。以上、獄寺君からの調査結果より、同盟締結の依頼自体が、危険であると僕は判断できると思う。皆の意見は?」 「最初から、こちらの利権利用使用が目的なのが、気に入らないね、頭は良いんだろうけど」 ツナの言葉に、雲雀が相槌を打つ。後に誰も進言しない段階で、皆が同意見であるとみなされる。 「で、話しは獄寺君の捜索に移行するんだけど…」 「今回に関しては、相手方を殲滅して良いわけだよなぁ」 ツナの言葉を切る形で、スクアーロが発言をする。 「…無論、そのつもりで、ヴァリアーを呼んで居るがな」 「やーりぃ。久々に派手に殺れんじゃん?王子立候補〜」 小僧の言葉に嬉しそうに、ベルが手を上げれば、ザンザスが静かにうなづき、続ける。 「あと、スクアーロ。テメェも行ってこい」 「了解だ」 スクアーロは、俺の方に視線を移すと口許だけで笑った。 「殲滅は、ヴァリアーの仕事として。後方は、山本と雲雀。行けるな?」 「後方っても、別に噛み殺して良いわけでしょ?」 「無論」 「じゃ、了解」 小僧なりの配慮か。直接には潰せないが、獄寺を探す口実はできる。事実上、ベル、スクアーロ、雲雀の前線に後方の俺の配置が出来上がる。 「山本、先に言っておくが、私情挟むんじゃねーぞ」 『…もちろん』 小僧も釘を刺してはくるが、多少は目を瞑ってくれると思う。 「決行日時は、3日後の20時、作戦計画は山本に任せる。明日までに計画書提出。出来るな?」 『小僧。俺の一番苦手なとこ出しやがって』 「獄寺の報告書、多少イジレばすぐ出来上がるだろうが。後方の仕事だ」 『了解』 小僧に提出して、手直しすりゃなんとかなるか。第一、獄寺の報告書はほぼ、完璧に出来上がっていた。 「と言うわけで、解散。お疲れ様」 ツナの一言で一同が席を立つ中、ベルが珍しく声をかけてきた。 「ハヤトの作戦潰すなよぉっ」 『言われなくてもな』 「ま、前線任せて、探すのに専念しな」 手を降りながら去っていく様に、口にはしてないが、獄寺への配慮が見える。 『素直じゃねーの』 「山本」 『ツナ』 「獄寺君居ないと、会議進行大変」 笑いながら言うツナに、一緒に笑う。 「もう、大丈夫だね。山本」 『あぁ。サンキュー、ツナ』 皆、協力してくれてるぜ。 後は、作戦計画ちゃんと立てるからさ。 決行まで3日。かなり忙しくなる。 [前へ][次へ] [戻る] |