スク おいでませ 気持ちの良い朝日を浴びながら、フライパンを火にかけて卵を2個割って落とす。 卵は重力に従って降下し、個気味の良いじゅわっという音をたてる。 今日もいつも通りの朝、いつも通りの朝食の支度。 そして、いつも通りに愛しの旦那様を起こしに行くのが私の日課。 フライパンの火を消して蓋をする。皿に移すのは彼を起こしてからでいいだろう。 エプロンをしたまま寝室へ向かい、中へ入れば、まだベットの中でスヤスヤと眠る夫。 頭まで被った毛布のからキスをする。 「朝よ、スクアーロ。早く起きなきゃ食事が冷めちゃうわ。」 ん゛ん、と言いながら寝返りを打つ彼にもう1度 名を呼んで起こす。 おかしいな、いつもなら一声で起きるのに。 「スクアーロ。」 「ん゛……名前?」 名前を呼ばれたかと思ったら、いきなり腕を掴まれてベットの中へ引きずりこまれる。 おかしすぎる。 やっぱりいつものスクアーロじゃない。 だって、いつもならすぐにベットから出て、おはようのキスをしてすぐ支度を始めるのに……。 そんなことを思いながら真っ暗な毛布の中で手を動かしてスクアーロを引き離そうとするがびくともしない。 ていうか、あれ? 何か手に当たるのは…髪の毛? バッ!! 渾身の力を出して毛布を引き剥がしながら飛び起きる。 そして私の目に飛び込んできたのは、 「……え?」 長くて綺麗な銀色の髪が散らばっていて左手には不自然な手袋。 顔はたしかにスクアーロなんだけど、姿は私の知っているスクアーロとは似ても似つかない。 一晩で髪が腰まで伸びることなんてありえないし、ということはここにいる人は私の知らない人。 …………誰? 「ちょ、ちょっと!」 「あ゛ぁ?なんだぁ、もう朝かぁ?」 のそりと頭を掻きながら起き上がるスクアーロらしき人はやはり顔はスクアーロで。 「あ、あなたは誰!?スクアーロはどこへ行ったの!?」 「はぁ?お前、寝呆けてんのかぁ?…………何でエプロンなんかつけてんだぁ気持ち悪い。」 「気持っ……あなたは私の知ってる人じゃないわ。」 「さっきから何を…………ここどこだぁ?」 やっと自分の存在がおかしいことに気付いたのか、辺りをキョロキョロし始めたスクアーロらしき人。 「あなた…本当にスクアーロなの?」 「当たり前だぁ!つーか名前、お前だって本当に名前かぁ?エプロンなんかする奴じゃねぇし、あと話し方もおかしいしなぁ!」 「そ、そんなこと言うならあなたもだわ!どうして一晩でそんな髪が伸びちゃうのよ!?それに、その左手は何!?」 私が必死に言い返したらスクアーロらしき人はきょとんとした。 その顔はやっぱりスクアーロで、少しドキッとした。 「……ちょっと待ってくれ、お前の知ってる俺はどんな奴だぁ?」 「や、優しくて、短い銀髪がとっても似合ってて、学校の先生をしているわ。」 「………誰だそりゃあ。」 「スクアーロ。」 「………頭痛ぇ。」 頭が痛いのはこっちの方だ。 どう考えてもここは私たち夫婦の家だし、おかしいのはこの人なのに。 「俺の知ってる名前はなぁ……ガサツで料理、つーか家事なんてできるわけがない。」 「し、失礼ね!私は主婦よ!」 2人して腕を組んで考えるが何がなんだかさっぱり分からない。 お互いにお互いの存在は知っているけれど知らない。 そんなことありえるわけないのに……。 「……………まさか、」 「……?」 「いや、これしか考えられねぇよなぁ。」 「な、何が?」 「多分…俺たちは住んでる世界が違う。」 「……………は?」 「説明すんのはめんどくせぇからしねぇ!だが、とりあえず俺はスクアーロでお前は名前に違いねぇし、そのうち戻るから心配しなくても大丈夫だぁ。」 そう言いながら私の肩をたたくスクアーロは、私の知るスクアーロよりいくらかぶっきらぼうで声が大きくて、だけどやっぱり笑顔は変わらない。 この笑顔を見ると安心しちゃうの。 「……じゃあ、とりあえず朝ご飯、食べますか?」 「いいのかぁ?」 「食べたらスクアーロを返してください。」 「いや、俺もスクアーロ……。」 めんどくせぇと言いながら頭を掻く彼をダイニングに通して目の前に朝食を並べていく。 心なしか目が輝いてるように見える。 「こ、これ全部お前が作ったのかぁ?」 「?そうですけど。」 「こっちの世界の名前に教えてやりてぇよ。」 さっきから聞いているけど、この人が知ってる私って……。 「なあ、」 「はい?」 「こっちでは俺たち、夫婦なんだよなぁ?」 「ええ。」 「その、幸せかぁ?」 照れくさそうに笑う姿にこちらもつられて笑ってしまう。 だって、当たり前すぎることを聞くんだから。 「もちろん!幸せすぎて罰が当たるくらいに。」 「そうかぁ。」 ボン! 私の目を見て笑ってくれた瞬間、目の前が煙に包まれる。 いきなりのことで、立ち尽くしていると煙の中から恋しい姿が。 「スクアーロ!」 「名前……?本当に名前か?」 訳が分からないという顔をしている、私の夫、優しくて短い銀髪がとっても似合ってて学校の先生をしている素敵なスクアーロにおかえりなさいのキスを1つ。 「い、いきなり名前に飛び付かれて、髪をどうしたとか手をどうしたとかカスだとか訳がよく分からな……。」 あまりに呆然としている姿に私は思わず吹き出してしまった。 よく見ればスクアーロは何だかボロボロになっている。 きっとむこうのガサツな私にやられたんだろうなぁって思ったらおかしくて……。 「さあ、冷めないうちに食べましょ。」 ねぇ、スクアーロ。 私が会った違う世界のスクアーロはね、違う世界の私を好きでいてくれてるみたい。 だって最後に見た顔はあなたが私を見てるときと同じなんだもの。 なんか不思議ね、私たちはどこにいても出会って恋に落ちる運命だったのかしら。 「何笑ってるんだぁ?」 「髪の長いスクアーロを思い出して。」 「?」 おいでませ ボン! 「あ、スクアーロ帰ってきた。」 「てめ、何で俺の上に乗ってんだぁ!?」 「さっきまでいたスクアーロ髪短いし、左手はあるし、弱そうでさぁ!キモかったんだよ?」 「………はぁ、そうかよ。」 「あれ?その顔はもしかしてパラレルワールドで私に会ったの?」 「お前もうちょっと女らしくしたらどうだぁ?」 「うるさい、暗殺者に女らしさイリマセーン。」 「はぁ。」 ―――――――――――――――一度はやってみたいパラレルワールドネタ! 何かまとまりないし意味わからんし、ぐだぐだで申し訳ないです、ホント、はい。 あ、何故パラレル行ったかというとフランとベルのイタズラで何かどっかから手に入れたパラレルワールドに行けるバズーカをスクアーロに試した、的な(適当すぎる)感じで\(^O^)/ 20101024 ←→ [戻る] |