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スク
ひまわり









どこまでも白い部屋。


窓の外は真っ青な海で、何だか悲しくなる。


すごく恐くて涙が出そう。

でも決めたの。




あなたの前ではいつも笑顔でいるってね。














コンコン。

病室の扉をノックする音に私は胸を躍らせた。



「どうぞ!」


私の言葉で病室に入ってきたのは綺麗な銀髪、私が1番大好きな人。



「スクアーロ!」


「う゛お゛ぉい、元気かぁ?」


「何それ。病人に対する嫌味〜?」


「う゛お゛ぉ………。」


「ふふ、嘘!冗談だよ。」


私とスクアーロは恋人同士。
だけど、私は病を抱えてずっと入院してる。
そんな私をスクアーロはずっと支えてくれてるけど、本当はすごく不安。


迷惑ばかりかける私なんかをどうして好きだなんて言ってくれるの?


それを口にしないのは私がとても弱い人間だから。
スクアーロの優しさに付け込んで縋っているの。

自分でも吐き気がするくらい嫌な女。





ごめんね、スクアーロ。


でも、もう少しだけ。

もう少しだけだから。

もう少しだけしたらスクアーロを解放してあげられる。




だからお願い。

それまでは傍にいて。













「う゛お゛ぉい、今日も外は暑いぜぇ。」


「そうなんだ。私も帽子かぶって外行きたいなぁ。」


「良くなったらいくらでも連れてってやるぜぇ。」


「本当?嬉しい!」


いつからだろう。

約束ね、と言わなくなったのは。



「ねぇ、もっと話して!私スクアーロの話が楽しみで仕方なかったの。」


「そんなに期待されてもなぁ。暑さに苛々したうちのボスさんに殴られたことぐらいしか……。」


「えー?また殴られたの?スクアーロも好きだねぇ。」


「好きなわけねぇだろうが!」


いつからだろう。

スクアーロに嘘の笑いを見せるようになったのは。






「…でも今日は本当に暑そうだね。窓が何だかいつもより温かかったから。」


「俺は夏は嫌いだぜぇ。秋の方が涼しくて好きだ。」


「私も秋は好き。食べ物がおいしいもんね。」


「食い気かよ。じゃあ秋になったら美味いもんでも食いに行くかぁ。」



この時、私はどうして「うん。」と答えなかったのだろう。
それだけ言えば、その会話だけで終わるのに。
ただの口約束で終わるのに。



本当の私がそれを止めた。
スクアーロに嘘をつき続けるなんてできないよ。

私は弱いから、もう1人じゃ背負いきれないの。


苦しいよ。








「ごめんね、私は行けないや。」


「う゛お゛ぉい、何言ってんだぁ?早く身体 治しゃ行けるだろぉ?」


「ごめんね……無理なの。」


「名前…何で…。」


「自分の身体だもん。もう保たないことくらい分かるよ。」


「そんなことねぇ!必ず治るに決まってる!だからそんなこと言わないでくれよ!!……頼むから。」


スクアーロは顔を歪ませながら私を抱きしめてくれた。


ごめんね、苦しめて。

余命がもうないことを私に隠して、ずっと笑っていてくれたんだよね。



でも、もうすぐだから。








「私、スクアーロと出会えて本当に幸せだった。こんな私を大切にしてくれて本当にありがとう。」


「やめろ、そんなこと言うな。」


「次に好きになる人は健康な人にしてね。またこんな思いをするのはきっと大変だから。」


「名前!!」


「…スクアーロ。」


「俺はお前のことを迷惑だなんて思ったことなんてねぇ!だから無理して笑わなくたっていいんだ!お前は1人じゃねぇだろぉ?」




「………うっ、うぅ…えっ…。」


スクアーロには私の気持ちが分かっていたの?

そんなこと言われたら、我慢できないよ。
















「うっ……うっ…死にたく、ないよぉ。」


「ああ。」


「スクと…もっと、一緒に…うっ、いたい……。」


「ああ。」


「でも……っ、無理…なんでしょ?」


「名前……。」


「ごめ…こんなの、…スクを困らせる…だけなのにっ…!」


「そんなことねぇ。」


「スク、大好き…愛してる…。」


「っ……俺も愛してるぜぇ。」


「今まで…迷惑ばかりかけて…ごめんね。」


「だから言ってんだろうが、迷惑だと思ったことなんか1度もねぇって。」


「…あり…がとう。」


「もう少し…もう少ししたら、スクアーロを自由にしてあげられる……だからお願い、それまでは傍にいて…。」


「言われなくたって、ずっと傍にいてやる。…自由にするとか言うんじゃねぇ。俺は自分の意志で名前の傍にいるんだ。」


「………嬉しいな。」





























「なぁ、もう秋だぜぇ。好きだって言ってたよなぁ。」


目の前の墓標にゆっくりと花を供える。



「そっちでもちゃんと笑ってるかぁ?」


近くで波の音がする。

俺は静かに笑って空を見上げた。





















「スクアーロ。」


「何だぁ?」


「ずっと…聞けなかったことがあるの……。」


「…言ってくれ。」


「………うん。」














“私といて幸せだった?”
























「幸せに決まってんだろぉ?お前が俺に幸せってもんを教えてくれたんだからなぁ。」



どこまでも高く、透き通る青の秋空に向かってスクアーロが言葉を紡ぐ。



穏やかな空がスクアーロを包みこんでいた。
















ありがとう、私に恋する気持ちを教えてくれて。


ありがとう、人を愛することを教えてくれて。


ありがとう、生きる意味を与えてくれて。














私はあなたに出会えて本当に幸せでした。

























ひまわり


ありがとう、俺に人の心を教えてくれて。


ありがとう、愛する喜びを伝えてくれて。



俺はお前に出会えて本当に幸せだった。


























20100731


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