残酷なシンパシー
「どうしてあんたと名前が一緒にいるんですか」
「どうして…ね」
「また変な事をやろうってんじゃないでしょうね」
「それはないから安心してよ。というか俺は何もしてないんだけど」
黙って話を聞いていると何となく話が掴めてきた。そして思い出す
(あぁ、紀田はこいつが大嫌いなんだった)
そりゃそうだ。
彼の様々な物をぶち壊されたんだから
そして私は玩具を見つけた子供の様に笑った
「とりあえず名前を渡して下さい」
「なんで?君は彼女に何かあるのかな、それとも彼女に惚れちゃった?」
「ちが「紀田」
二人の視線がこちらへ向く
「尾行は楽しかった?」
紀田の瞳が見開かれる
「私を助けなきゃって思ったの?そうやって勝手な正義感を振る舞って楽しかった?俺がどうにかしてやらなくちゃって」
「………っ」
「とんだ勘違いと自惚れ。それで自分に浸っているのかな?私は助けてなんて言ったかしら」
「名前!」
「いまはあんたに構ってる暇無いの、私死んじゃうかも。主に出血多量で」
いまは死ぬ程の量ではないけど治療を早くしないと致死量を越すかも知れない。足も痛いし
「新羅さんの所に行きます」
「もしかして俺が運ぶとか言わないよね?」
「……セルティ呼びました。池袋公園で待ち合わせなんでそこまで運んで下さい」
「えー紀田君に運んで貰えばいいじゃない」
折原さんは彼を見た。本当は渡す気なんか無い癖に意地悪く笑う
だから言ってやった
「……嫌です。私人間嫌いなんで」
―
セルティに運ばれて新羅宅に到着してからすぐに治療をしてくれた。
「足は骨折、首は出血止まったけど跡が残るかもね。それと貧血」
「……骨折…貧血…」
「シズちゃんの投げた標識を蹴り倒せばそうなるよねぇ。だけど粉砕じゃなくて骨折ですんだんだから、ある意味シズちゃんに匹敵する力の持ち主かも知れないよ。」
「静雄さんは骨折すらしないと思います。というかなんで折原さんが居るんですか」
「君がどんな顔するのかなと興味が湧いただけ」
「今すぐ失せろ」
「…取り敢えず全治1ヶ月って所かな。そんなに酷くないからすぐに治るよ」
ここではギプスが巻けないので新羅さんの知り合いの病院へセルティに送ってもらう事になり、一旦新羅さんの家を後にした。
「ごめんなさい、せっかくの休みだったのに」
[大丈夫だ、気にしなくていい。仕事もしばらく休みか?]
「この状態じゃね」
[こう言うと悪いが、こちらは少しホッとするよ]
「…ごめん」
私が心配かけていることは解ってるけどやっぱり私にはこの道を歩んで行くしかないんだよ
そう話すと[辛くなったらいつでも言ってくれ、大した事は出来ないかもしれないが力になるから]と言ってくれた。
やっぱりセルティは優しすぎる。
私にはその黒が眩しすぎるよ。
―
「臨也、今度何をしようとしてるんだい?」
「心外だね、何かをしようとなんかしてないだろ。」
「君なら静雄の投げた標識ぐらい避けられたんじゃないかい?」
なにか核心があるように語る新羅を鼻でわらう。そんなはず無いじゃないか
また来るよと一言いってマンションを後にした。
オレンジ色に染まる空を見上げて俺は大声で笑いたかった。楽しくて仕方が無い、やっぱり俺の予想を何処まででも上に行く。
だから人間は興味深い、もっと知りたい。彼女の過去を、彼女の実態を、彼女の全てを……
なんとしても手に入れたい
「まぁ、そう簡単には行かないんだろうし…こっちだって考えがある」
そう言って笑いながら池袋へ消えた
残酷なシンパシー
(そんなに簡単に行ったら面白くない)
(…これからが楽しみだ)
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