もう少しの感傷
「……っ」
「……歩けるの?」
「大丈夫です」
とか言ってるけど、殆ど足を付けないで歩いるのが精一杯だった。
「これぐらいの怪我にはなれて…まっ!?」
「黙って」
そう低く呟いて私を抱き上げた。この細っこい体のどこにこんな力があるのだろう
「お、降ろしてください!!」
「歩ける訳ないでしょ?標識横から蹴って薙ぎ倒したんだよ?しずちゃんじゃあるまいしいくら鍛えて戦闘経験あるからって自分の力過信しないほうがいいよ。それに…」
それに、君はこう見えたって女の子なんだからさ
そう低いトーンで耳元で呟く。しかし残念ながらなんのときめきも抱く事はなかった。それを言ってやると「つまらないなぁ」と心底嫌な顔をされた
「……っ」
「痛い?」
「痛くないです」
本当は歩く度に伝わる振動が響いて痛い。
「ふぅん……」
「いっ!?いた…ぁ、いっ」
「痛く、無いんでしょ?」
「…っあ、っつ…!!」
腫れ上がった足を力いっぱい掴んで圧力をかける。それを楽しそうに口を歪めながらニヤニヤと笑う情報屋
「俺の事どうにか出来ると思った?そんないっぱい武装しちゃって」
「―っ(ばれてる)」
かちり。私の首にナイフが押し当てられる
それってさ
「それなりの覚悟はしてるって事だよね?」
抱き上げる手にいつの間にか持っていたナイフで
私の首に冷たい鈍色のナイフを力を入れて押し当てる。
「…―っぁ」
ぷつりと、裂けた皮膚の間から赤い球が浮き上がり筋を作って下に落ちる。
右太ももに付けた銃は取り出せない、きっと左も同じだ。下手に動けば本当に致命傷になりかねかいが
(うごかなければ…)
動かなければ大丈夫だ。
大丈夫のはずだ。
「……ほら、早く掻き切って、みなさいよっ」
「…へぇ」
「あなた、殺す気ないで、しょ?」
痛みに耐えながら挑発するとお手上げだと言うように優しく笑い、ナイフをしまった。溢れ出す血液にうざったさを感じる
「よくわかったね」
「舐められたもんね、仕事では、命に関わることなんだから、遊びか、本気かなんて見れば解るでしょ」
「ま、確かにそうだねー」
「いい加減、降ろしてください」
「立てる訳無いじゃん。まあその状態で立って歩いてくれるなら俺も無駄な体力と筋力を使わなくていい訳だけど、それで歩けるのかな名前ちゃんは。勿論無理に決まってるよねぇ」
「……誰のせい、だと思ってんの」
「……さぁ」
(いつか殺してやる…)
首の傷は思ったより深く入ったようで血が止まらないし、足はきっと捻挫では済まないかもしれない。
「(血を流し過ぎたかな、頭クラクラする…)」
「うわ、顔真っ白!あははは」
「だから、誰のっ」
「名前?」
「せい……え?」
突如響いた声に体を硬直させた。
目を向けると同じクラスの紀田正臣が驚愕の顔でこちらを見ていた。
「…紀田?」
「…臨也さん、なんで名前は血だらけなんですか、
「紀田くんじゃないか、奇遇だね」
「そんなこと聞いてんじゃねぇんだよ!!」
「なんであんたと名前が一緒に居んだよ!!!!!」
もう少しの感傷
(私は思わず笑みを零した)
―
いっきに書いたから結構謎な展開。
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