わたしのことが知りたい人
「……」
「早いねーきっかり5分前だ」
「約束は守る主義だから」
「人が嫌いなのに?」
そう聞いた本人はニヤリと意地悪く笑う。答える必要もないと判断し軽く流すと今度は鼻で笑ったいちいちムカつく奴だな
「じゃあ行こうか」
「…どこに?」
すると今度は驚く程優しく笑って
「どこがいい?」
「……は」
なんだこの人
いきなり呼び出したと思っていたら行くところも考えずにいたというのか。呆れて無言で腕を組む
「やだなぁ怒らないでよ、俺は君の行動や考えが知りたいだけだよ」
「あなたって本当に悪趣味ですね」
「今更だね、それとも何か調べたのかな?」
「いろいろとね」
人間を愛している情報屋。自殺志願者の事を嵌めたり池袋最強とうたわれる平和島静雄とやり合える一人だったり、カラーギャングの抗争に裏から手を貸したり聞いている限りではあまりいい噂ではない。
それを言うと楽しそうに正解と言った情報屋。
「こんなところにいるのもなんだし、喫茶店にでも入ろうか」
そう言った情報屋に強制的に連れられ駅を離れた。
―
「今日学校は休み?」
「休みました」
入学早々にずる休みか、と笑って言う情報屋を軽く睨む。誰のために休んだと思っているんだ。別に行くつもりは無かったのだがそう言われるとイラッとする。
そんな私の思いとは裏腹に様々な世間話をしていく人に適当な相槌だけ打つ
「名前ちゃんさ俺の話聞いてる?」
「あの世を信じてるかどうかって話」
「そう、それで君は?」
「信じてません。確証がありませんし信じたって無駄なだけだと思っているので」
「……へぇ」
情報屋はまたにやりと満足そうに笑った。
「……さて、質問させてほしいんだけど」
「…なんですか」
「サタンフィールドって知ってる?」
「……」
「その名の通り悪魔の領域って事。なにかの組織らしいんだけどさ…知らないかな?」
普通の人にはとても優しい笑顔に見えるだろうが、私から見ればその人の奥底に在るものを探る様に見える。
私の心拍数は上がっていたが顔は冷静を装う。こういうことは慣れていた。
「……いいえ、聞いたことありません。」
「ふーん」
「残念そうですね」
「いや?そうでもないよ」
たいしたことない様に笑うけど、頭じゃ何考えてるかわからない。
私は一抹の不安を抱えながら情報屋と喫茶店の外へ出た。
「何処か行きたいとこは?」
「じゃあハンズ行きたいです」
「へえー。君みたいな子もハンズなんて行くんだね、買い物するんだ、ははっ」
「…(私の事何だと思ってるんだろう)」
実は池袋に引っ越して来たばかりなので、部屋にまともな物が無いのだ。
それを伝えると軽く「知ってるよ」と言われ(引っ越して来たなんて言った覚えない)情報屋に対する警戒と嫌悪感を更に強くした。
――そのとき
ドガァアッ
「っ??!!」
この場にはあまりにも不釣り合いな衝突音が響き渡る
その直前に強く腕を引かれていつの間にか情報屋の後ろにいたから何が起きたのか把握出来なかったのだが
「いぃぃーざぁあーやぁあー!!!!!」
「…しずちゃん」
「なんで手前が池袋にいんだ?あぁ!?」
噂では聞いていたが平和島静雄を見たのは初めてだった。情報屋の隣にはなぜか自動販売機が道にめり込んで横倒しになっていて
(情報屋が手を引いてくれなかったら……)
間違いなく怪我所じゃ済まなかった。
「怖い怖い。あいかわらずの馬鹿力だね」
「るせぇっ!!!」
平和島静雄は近くにあった標識を引っこ抜き
「っ!」
やり投げの如く投げたのだが近くで投げられたそれは
――当たる
そう臨也が思った瞬間
ガランと大きな音が響く
驚いて顔を上げると
「危ないです。こんなところで」
前には名前が立っていた。
「お前っ、蹴ったのか」
「軌道を変えるには横から蹴るのが一番良い方法です」
「足は、怪我ねぇか!?」
「大丈夫です。伊達に鍛えてません」
珍しく慌てた静雄を後ろから見ていた臨也
「…帰るよ」
「え?!ちょっ」
「じゃーねしずちゃん」
「いぃいざぁあやぁあっ!!」
「まだやる気?」
「いっ!?」
「名前ちゃん歩けないんだけど」
そこには真っ赤に腫れた足があった。
わたしのことを知りたい人
やっぱり標識は無理でした。
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