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仮面の下、冷笑



私は人間が大嫌いだ。


私利私欲の為だけに働く人間


金の為なら何でもする人間


自分の事だけで精一杯の人間


簡単に裏切る人間。




だから人間は大嫌いなんだ―











「へぇ、面白いことを言うね」


「…人間なんて下らないもの」





だからこうやって簡単に死んでしまうんでしょうね―



そう言った少女はカチャリと不似合いな重々しい銃を臨也に突き付けた。





「やだなぁ流石に銃は死んじゃうよ」

「…あなたは私のことを知りすぎたんです」

「だけど君は俺を殺せない」

「…」

「契約をしようか」

「…契約?」

「そ、俺は情報屋だ。つまり俺は名前ちゃんの仕事に有利な情報を渡せる」





悪く無いよねぇと優しく笑う。

確かに悪くは無い、今までに情報が少なくて困った事もある。

が、それとこれは話が別じゃないか。





「メリットとしては釣り合わない。」

「いいのかな、それで」

「…」

「状況をよく考えてご覧よ」




わかってる。
明らかに私が不利な事くらい。


情報を握られ、流されたら間違いなく私はあいつらに捕まる。


それだけはなんとしても避けなくちゃならない。





「…約束は守って下さいね」





苦渋の決断だった。
念を押すように睨み付ける。一体どこ入れた情報か知らないが流されたら私の命に関わる。



つまり私の命を握られた事になるのだ




(こいつにはもう逆らえないって事か)


「大丈夫だよ」





情報屋はにいと笑ってこちらを向いている。





「…?」





ざわり、と背筋が粟立った




「俺は君を絶対に裏切らないから」


ダンッ








「………銃の次はサバイバルナイフ?」


「次にその言葉を言ってみろ!!て前の首かっ切ってやるっ!!!!!」




「……出来るの?」





「……っくそがっ!」





そう笑って言う情報屋の右手の携帯。


そのボタン一つで私の情報が流される事を意味していた。





「何とでも言いなよ、君はもう俺の手の中だよ…」







 ―





「たっ!頼む!!殺しだけはっ!うぐっ!!


「…恨むなら、依頼者を恨め」




足元で動かなくなったのを確認してから素早く後処理をして携帯を取り出した。




「作業終了、後を頼みたい。えぇ、お願いします。」




連絡をしてすぐに私の唯一の友人。セルティ.ストゥルルソンは来てくれた。

私にとっては有り難い。




『遅くなってすまない、今日も同じか?』


「これをいつもの所へ運んで欲しいの」


『了解したが、まだ仕事続けていたのか』


「仕方なく…だよ」





私の歯切れの悪い返事か、顔色の悪さを見たのかいつもと違う事に気付いたらしい。




『……何かあったのか?』


「ちょっとね…」


『何かあったら言ってくれ、すぐに駆けつける』




優しい。
私なんかと違って優しい。


彼女の正体を知っている私は人間嫌いの私にとって彼女だけが唯一心を許せる一人だった。




「ありがとう、セルティ」


『じゃあ、また』




セルティの背が見えなくなってから静かにその場を離れた。





 ―





「彼女は矛盾してるんだ、とっても歪な形でね。」





誰に問いかけるでも無く臨也は淡々と喋る




「名字名前を確実に手に入れられる方法はまだある。」






楽しみだなぁ」






くるくると回る椅子に座って嬉しそうに笑う。




「まだ始まったばかりだ…」




彼女はどう動くかな?





仮面の下、冷笑


(だから人間は大嫌いなんだ)




101023 加筆 修正


あきゅろす。
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