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僕らに掟なんてないよ



「名字さん!!」

「…」

「やだなぁ、シカトなんてこのナイーブで繊細な俺の心は直ぐに傷付いちゃうよー」

「…」

「そだ!いつまでもさん付けはよそよそしい!!更に仲良くなるために下の名前で読んでもOK?」

「…」

「…じゃあそうさせて頂くとして、俺の名前わかる?」

「紀田正臣」

「ご名答!!いやーこんな可愛い子に覚えてて貰えるなんて俺のテンションは更に上昇…てことで放課後どっか行こうぜ」

「…ナンパするよりやることあるんじゃないの?」



彼の止まる事のない話を聞いているとおかしくなりそうだ。答えるのが面倒で全て聞き流していても話しかけてくるとは、こいつおかしいんじゃないのかと本気で考えていると携帯のバイブが震えた。



「よし、じゃあ放課後どっかいこ」
「駄目、約束が入ったから無理。」
「えー…しかし、約束ならしょうがねぇか…また今度」
「…もう私に関わらないのがいんじゃない?」



彼の言葉を遮ったのは訳がある。



「大好きな沙樹さんに嫌われるよ?」

「?!!」

「じゃあね、正臣くん」



意味深な笑みを残して教室を後にした








 ―



紀田正臣のあの顔を見たとき、正直大笑いしそうになった。あの絶望と恐怖と警戒した顔。やっぱり人間の絶望する顔は大好きだ。



「…ここか」



いつの間にか到着した依頼者に行けと言われた所は新宿の高級マンションだった。

玄関のインターホンで名前だけ伝えると何も言わず切れ、ドアが開いた。

仕方なく上まで上がって部屋の前まで行くと待ってましたと言わんばかりにドアが開いた。

そこで私はひどく後悔をした。





「やぁ、いらっしゃい」

「…何故折原さんが」

「今回のクライアントは俺だからねー」

「…は?」





つっ立っていると無理矢理中に引き込まれソファに座わらされたが冷静になんなんですか?と聞けば張り付けた笑みを浮かべ依頼したのは俺だからと言う。

本当にこの男は何がしたいのだろう





「俺は君に興味があると言ったよね、だから今日ここに呼んだんだよ。」

「私は興味ありません。というか私呼び出す為だけに紹介屋に以来したんですか?ばかじゃないんですか」

「そう言わないでよ嫌われちゃうよ?」

「大歓迎です、本当なんなんですか」

「俺はね人間が好きなんだ。人間を愛してる、だから俺は人間の様々な面を知りたいのさ」



「……人間を…?」


「そう。だから君に興味を持った」




冷血と呼ばれるその訳を

殺し屋をやるその意味を





「君の両親は幼い頃に死んでるね、今は一人暮らし。ネット上で冷血の猫と呼ばれる殺し屋、世間で大きく取り上げられ無いのは死体が絶対に見つからないから行方不明として扱われる。それ故に詳細は不明…」

「……本当になんですか?」

「最初に殺したのは育て親の祖母」

「…はぁ」

「……これを聞いたことで動揺すらしないんだね。慌てる顔が見たかったのに」



もうなんだか呆れて、よくもこう喋れるものだ。と逆に感心してしまう。

なら話そうじゃないか、私の詳細――





「…折原さんは人間を愛しているといいました」





だけど私はそれが理解出来ない。

私にはそのような感情は持ち合わせていないから。





「私は人をなんの躊躇いもなく殺せます」





何故なら





「私は、人間が大嫌いだからです。」






だから私達は合い入れない存在なんです。





僕らに掟なんてないよ


(だから人間は面白いんだ)



101023 加筆、修正
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