わたしの幸福論
池袋。
この町には混沌と非日常が常に存在している。
私もきっと非日常なかの一人だろう。
校門から新入生が溢れてくる、今日から私は正式に来良学園の生徒になった。
まわりは友達を作るのに必死で声を掛けてはお喋りを続けている。だけどそんなのには目もくれず、さっさと帰る支度をして教室を足早に出ていく
友達や馴れ初めの仲間は要らない。
「名字さん!!また明日ねー!!」
大声で名前を呼ばれて何事かとおもった。
仕方なく振り返ると初日から金髪にピアスを空けた男子が手を振っていた。(名前は紀田だったと思う)
たいした興味も湧かず大した返事もせずに教室を後にした。
急がなければ、約束の時間になってしまう。私は周りの人間にかまっている時間など存在しない
―
帰りを急いでまで行かなければならなかった場所はあるビルの1室だった。
「早かったな」
「約束は守ります」
「今日は高校の入学式じゃなかったのか?」
「仕方なく入学したようなものですよ」
男はそうかと呟いて高そうな革の椅子に座り直して顔付きを改める。
取り出したのは1枚の写真。それを受け取り一緒に渡された書類に目を通す。
「報酬は?」
「いつもと同じだ」
「わかりました。こちらもいつもと同じで」
「本当に助かるよ、氷血の猫さん」
「これが私の仕事です。」
そういうと男は下品に顔を歪めて笑った。
私は基本的に依頼を頼まれればその日の内に行動を起こす。
深夜池袋の町が眠った頃、行動を開始する。
薄暗い路地の裏を歩くターゲットの後ろをつける。
気付かれぬように、ひたり、ひたり
暗闇と緊張感とが私を支配していく中で
片手に持ったサバイバルナイフを振り上げた刹那、ターゲットは悲鳴も声を上げる事もなく前に崩れ落ちた。
ざくりと柔らかな肉に突き刺さる感覚を私の手に残して
「…つまんない」
案外あっさりと終わった仕事になんとなく物足りなさを感じて足元に転がる死体を足で踏み付けてみる。
「大したことなかった……」
早く後始末を任せて帰ろう、髪や顔についた返り血を一刻も早くて落としたい。
そう考えていたときだった
「いやぁ、派手にやったねぇ」
「っ!」
「首と心臓をザクリ、なーんちゃって…おっと」
「…(チッ、油断してた)」
「怖い怖い。いきなり切り掛かるのは良くないんじゃないかなぁ、まぁ君の慌てた顔を見れたからいいよ」
見られた。
殺人の現場を
私の仕事を
「君の事だろ?氷血の猫って」
言われた瞬間体を動かした
ナイフをそのまま投げたが避けられる。
それは想定内なので即座に回り込み脚を払って転ばせ、馬乗りになって額に銃を突き付けた。
細身の赤い目をした男はファーの付いた黒いコートから降参と言わんばかりに両手を上げて不敵な笑みを浮かべ喋る。
「ずっと君に興味があってね。調べていたんだけどなかなか情報が掴めなくて直接来てみたら」
「…何の用だ」
「まさかこんな女子高校生だったとは、夢にも思わなかったよ!!!!何かの組織にでも所属しているのかな?」
「…何の用だ」
「聞いた所で話してくれる訳無いよねぇ…ま、今後君とのパイプも作っておきたい所だし、俺はまだ死にたくない。だから自己紹介でもしておこうか?」
「…いますぐ死ね」
そんなに警戒しないでよと笑う男はこの現場を目撃してなお逃げ出さず悲鳴さえ上げていないことに気付いた私は警戒を一段階引き上げる
「俺の名前は折原臨也。情報屋をやっている」
「…折原、お前が?」
「俺のこと知ってるみたいだね。まぁなにか有ったら連絡するといいよ」
「…」
「それより、早く後処理しないと人が来ちゃうんじゃない」
「……」
「あぁ、あとこの事は誰にも言わないから安心してよ」
「信用できない。」
「俺は情報屋だ。文字通り情報で食ってるんだよ、お客だって選ぶときもあるしもちろん売らない時もある。」
「なにか信用に足る何か出せ」
「生憎俺は何もないんだよねぇ」
「殺して欲しいの?」
瞬間、視界がぐるりと回転した。
背中に衝撃を感じ息が出来なくなる。
気づけば立場は逆転していて
すると鼻で笑ってファーの付いたコートを翻して池袋の暗闇の中に消えていった
これが、私と折原臨也との出会い
わたしの幸福論
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