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「やっぱり俺の読み通りだねぇ」

「…何の話」

「いやー、彼女がそんな簡単について来るとも思って無かったし、それじゃつまらないしね」

「あぁ…あなたのお気に入りの子ね」

「なに、なんかあるの」

「…別に」






そう返す波江を珍しく思いながらもスマートフォンに入ってくる報告を読みながら微笑んだ






「なに、彼女が来る度に隠れててって言った事怒ってるの?」

「勝手にそう勘違いしてればいいわ」

「…ふぅん」

「どうせ警戒されないようにとかで私を隠したんじゃないのかしら」

「まあ、間違いではないね。」






臨也は興味が無いのか適当にあしらって今度はパソコンに目を向けた。






(…さて、どうするのかな)



























(この辺りでいいか……)






未だに名前の後を追って来る奴らを横目で確認する。


きっと彼らはだんだん人気が無い所に進んでいることにまだ気づいて無い。






「……バカみたい」






久々の感覚に毒づきながらも腹のそこから来る笑いをこらえきれずに口元で微笑む






(絶対にただじゃ帰さない。)






足のギプスがあるのは闘いづらいが名前にとってそれは誤差の範囲で特に問題は無い。






ここまで来てやすやすとついて来ると言うことは"彼ら"ではないということの確認にもなる

最初の尾行から下手くそだったから違うだろうと踏んでこの行動を起こせたといってもいいかもしれない。






予想通り"彼ら"では無かったのだが






そして突然後ろを振り向いて止まった。


完全に人気は無い。


男達は気付かれていたとは思っていなかったらしく物陰に身を潜めている。

普通じゃ気付かないだろうが名前にはばればれだ






「尾行なんて、何の為にですかー?」






そう大声で問い掛けると観念したようにぞろぞろと出てきた。ざっと4人






「ねぇちゃん、よくわかったなぁ」

「…」

「俺達は仕事頼まれてんだ」

「なんだかわかるか?」



「…馬鹿馬鹿しい」



「…んだとぉ?」

「どうせ動けなくなるくらい痛め付けて身柄を確保の後、指定の場所に運んで依頼は成立とか言うんでしょう?」

「なっ?!」
「どこでそれを知った!?」






だめじゃない。すぐにボロだしちゃ







「ずっと前から知ってるわ。尾行の仕方も、闘い方も。あんた達よりも尾行は私の方が上」







何年やらされたことか







「早く来なさいよ、痛め付けてみなさいよ!!!」






久々の感覚に少なからず名前は興奮していた。







何かを叫びながら走ってくる4人






(自ら来てくれるなんて)






目前まで来て拳を振りかぶる男の前で素早くしゃがみそのまま松葉杖で右から耳を狙って思いきり叩きこんだ。



バギという音と同時に左の松葉杖で喉を思い切り突いてさらに右手の松葉杖で渾身の力を込めて鳩尾を打つ。



声を上げる暇もなく倒れ込む男を尻目に別の男が飛び掛かって来る。





「…ちっ」





すぐに半歩下がり男の蹴りをかわしてさらに間を取る





「ねぇちゃん、ただもんじゃねえな」

「…」

「喧嘩慣れしてるって訳でもなさそうだ」

「…良く見てるじゃない」

「…こちとら仕事なんでねぇっ!!!!」

「…っ」






更に右から来た蹴りを右手で受け止め松葉杖を一本後方に投げると後ろにいた一人に命中した。





間髪いれずに太股に左足で蹴りを入れるとガクリと膝を着く男


さらに顎を膝蹴りでとどめを刺すと気を失って倒れ込む






「うぉおおぉおお!!!!」

「…甘めぇんだよっ!!!」






正面から来る拳をかわして足を引っ掛けると簡単に後ろに転ぶ






「う、ぐっ」

「さぁ、話して貰おうか」






そう言いながらナイフで男の頬に1本の傷を入れ、首に宛がった。






「…い、ぁ」

「…言わないの?」






ぐっと力を込めるといとも簡単に皮膚は裂け紅い血が伝う。

流石に慌てたのかぽつりぽつり話しはじめる男。






「ね、ネットで頼まれたんだ!!!だから相手の顔はしらねぇ!!」

「…」

「な名前は、ぁ、なっ名倉とか言う奴だ!!!」

「真実?」

「本当だ!!嘘じゃねぇ!!そいつにお前を連れて来るように頼まれたんだ!!!」

「どこに?」

「○町の陸橋の下だ!!」






そこまで聞ければ充分だと言わんばかりにナイフをしまって立ち上がる


安心したような顔をした男に一発蹴りを急所に入れて気絶させると





足早にそこを去った。








「また、あいつの仕業か…」









めんどくさいというか、本当にうざったい。


どうせ名前が喧嘩に勝つ事をわかってた癖にこうしてチンピラ風情の奴らに仕事を頼むくらいだ。


相当暇なのか、名前を手に入れたいとか言っていた事は本気で無いような気がしてならない。







(…あいつ、遊んでないか?)







そうだったらぶちのめしてやりたい。



そんなことを考えながら松葉杖で歩く







あー嫌だいやだ。
久々にぶちのめしたけどイマイチ足りない。


もっと血肉踊る闘いがしたいのに。








それは足を骨折しているから仕事に戻るのはまだ無理な訳で。







全部あいつのせいだ。








そう考えて歩いていると


凄く遠くに、男女の二人組が歩いて来るのが確認できた。







「…っ?!」






その瞬間見つけてはいけないものを見てしまった様に名前は珍しく顔を強張らせた



さいわい二人組はこちらには気づいていないようだった





急いで物陰に隠れる。

冷や汗が全身から吹き出したのがわかった。








(……なんで!!こんな所にっ!!)







いくら何でもばれるのは早すぎるんじゃないか、そう思ったがあいつらならもう行動しててもおかしく無い





それは、一番自分がわかっていたことだ。






(…)






嫌だとか、言ってる場合じゃなくなったな……




見つかったら元も子も無い。野宿は本格的にまずい……どこか足が付かない所探さないと…








そう思った時。
皮肉にも思いついた所は1ヶ所だけだった。








(○町の陸橋…だったか)









名前は慎重に目立たぬ様に移動を開始した




















○町の陸橋に来るのに普通の倍時間がかかった。

その分辺りを警戒しながら来たからだ。







「…折原…さん、いるんでしょ!?」





さん付けに一瞬躊躇ったが大声で叫んでみると柱の影からゆらりと姿を現した。






「やっときたねー、待ちくたびれたよ。まさか君がそんなにあいつらに手こずるなんて考えてもみなかったねぇ」


「…あんな奴ら秒殺です。」


「ならなんで君はここに来たんだい?」

「…今朝話してた取引のことで」








臨也が出した家に住むという取引はまだ記憶に新しい。










「その取引」







小さくつぶやいて更に臨也を見据える

まっすぐな濁りのない瞳で


そして








「その取引、応じましょう」









彼女は確かにそう言った。














(やっと)
(来てくれたね)


あきゅろす。
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