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狼男とハイヒール




なぜこうなったのかは全くもって予想出来ないし、わかった所で私の家が消えたことに変わりはない

大家さんに連絡したら凄い涙声で生きてて良かったと叫ばれた。

携帯のスピーカーが壊れる勢いで言うから耳がしばらく聞こえなくなった。






『音信不通だから中に取り残されたのかと思って、良かったよ…生きてて』

「なんでアパートないんですか」

『…それがねぇ、火の後始末が悪かったらしくて火事で…全焼、して…』

「全部ですか」

『えぇ…ごめんね名前ちゃんの物何一つ運び出せなかったの…ほんとにごめんなさい…』

「……大丈夫です」






いや、大丈夫じゃないけど。


でも預金はあるしある程度の予算は持ち歩いているからなんとか生きていける。…はず





問題は





「……住む所か」






簡単にいえばセルティの家に1日泊まったその夜



持ち物全てを失った事になる。





(またセルティの所に世話になるのは嫌だし)

(ホテルとかウィークリーマンションにしても足が付くし…)

(ここ管理が適当だから都合よくごまかせたのに!!)





偽名を使っても多分ばれてしまう可能性が高い

こちらとしてはとても都合が悪い最悪の状況だ。





ぐぅう





「はぁ…」





こんな時でもお腹は空く私のお腹に少し苛立ちを感じながら仕方なくマックへ向かうことにした。













今までは自宅で料理していたので夜にマックを食べるのはすごく久々だった。





「…このあとどうしよう」






流石に野宿は頂けない。
出来れば屋根のある室内で寝たいが、最悪の場合を想定してそれも考えに入れておくしかない。






「あれ、お前」

「…?」






振り返ると
バーテンにサングラスの長身の男とドレッドヘアの男がトレーをもって立っていた。





「なんだ静雄、知り合いか?」

「いや、ちょっといろいろあって」




「…平和島静雄」






なんでこんなところで会うのか。






「この間は悪かった」

「お蔭様で足はこの通りです」

「静雄、お前何したんだ」

「ノミ虫に向かって標識投げたら…こいつが、蹴り飛ばしたんです」

「蹴り飛ばした?!」

「早すぎてうまく受け身が取れませんでした。」

「(静雄が投げやつを蹴るって……)」






すると名前の隣にトレーを置いて話し出した。





「(敢えて人がいない所で食べてたのに)イラッ」

「お前名前は?」

「…(無視)」

「…えっと、その、あ、足本当悪かった…」

「全治2ヶ月です」

「…すまねぇ」

「別に構いません。仕事が出来なくなるだけです(イライラ)」

「…それってまずいんじゃ」

「平気です。貯金ぐらいしてあります(イラッ)」





そう彼女は言うが、高校生が稼げる値段など底が知れているはずだ。

ただでさえ松葉杖なんだから歩きにくいし、夕飯をマックで済ませるんだから一人暮らしなのかも知れない


と静雄は考えていた。





「お前いくら貯金って言ったってそんな2ヶ月も仕事無しで生活出来んのかよ、学校もあるんだろ」

「大丈夫です。700位はあります」

「なっ?!!」

「平和島さんよりは貯金してると思いますけど」

「仕事ってコンビニのバイトとかじゃないのかよ」

「言いません。まず平和島さんに話す理由が存在しません。」

「……自分を犠牲にするようなことだけはや」
「そんなことだけは絶対にしません。」




嫌われているのか、名前すら教えてくれない彼女はこちらを睨んで立ち上がり、それではとか言って立ち去ろうとした。


が、





「まてよ」

「……なんですか(イラッ)」

「なんか詫びさせてくれよ」

「そんなもの要りません」

「だけど、」







ヒュッ







それではこちらの気が収まらない。


そう静雄が言葉を紡ぐ前に眼前ぎりぎりまで迫った松葉杖の先端に一歩も動けなくなった。



いつも臨也にそんなことされたら速攻で反撃していただろうが、今は驚きのほうが勝って動くことすら出来なかったのだから。






「しつこいですね、いいと言っているでしょう」

「…だけどよ」
「知っていますか?確かに静雄さんは池袋でまともにやり合えるのは折原さんぐらいしかいないほど最強と謳われています。自販機すら持ち上げてしまう強靭な肉体ですからね。でもいくら静雄さんでも」





「目玉だけは…鍛えられないんですよ」





言葉通りゆっくりと静雄の目玉へ松葉杖を移動させていく。






「…っ?!」








静雄もトムも一歩も動かず一言も言わず固まっていた。




すると何ごとも無かった様に松葉杖を降ろしてこちらを一睨みした






「……私はこれで失礼します。」







そう言って去っていく彼女をトムは呼び止めようか迷って、結局出来なかった。







「…あの子何だったんだろうな」

「…わかんないっす」

「最近の子はみんなあぁなのかね」

「そうなんじゃないっすかね…」



















マックを出てから宛てもなく街をさ迷ったが寝れそうな所は無かった。





(ネカフェとかマン喫だけは絶対に嫌だし、ホテルもどこでも足が付く。)





最終的にたどり着いたのは




「……はぁ」









公園だった。








「しばらく野宿するしかないか………」





寝心地の悪そうなベンチに横になったら、よほど松葉杖での移動が応えたのかすぐに寝入ってしまった。





































「……あれ、なんでこんな所にいるのかなぁ」





ベンチで寝ている黒髪の少女を見つけると唇を歪めて笑う。





「あぁ、家が無いからこんなところで寝てるのか」






ひょいと優しく抱き抱えても起きる様子は無い。






「あはは、寝てれば可愛いのにねぇ」






赤い目をした情報屋は鼻唄を歌いながら殺し屋の少女を抱えて公園を後にした。










狼男ハイヒール




(やっと手に入れた)




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あきゅろす。
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