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■SS
■ずっとそばに。
「ああ、早く退院してぇ!」
ベッドの中でカゲミツは足をばたつかせた。
少しずつ起き上がれる時間が増えているとはいえ、退屈なのだ。
「パソコンでも触れたら違うんだけどなあ…」
打診するようにちらりとタマキを見るが、
「ダメ。」
と、一蹴されてしまった。
カゲミツは盛大な溜息をついて枕に顔を埋めた。
その様子を苦笑交じりに見ていたタマキは、前から疑問に思っていたことを口にした。
「カゲミツ…その・・・退院したら、家に戻るのか?」
「いや、戻らないけど?」
家出はいまだ続行中だ。
「じゃあ、退院したらどこに行くんだよ?」
「どこって…いつものワゴン車だけど?」
予想はしていたが、当たり前のことのように答えられタマキは絶句した。

車の中には二人とも最低限のものしか持ち込まないので、汚い、と言うことはない。
だが、それでも退院したての人間が車で寝起きと言うのはいかがなものか。
やはり不衛生だろう。
体調がしっかり戻るまで実家に戻るのが一番だと思うが(両親もそれを望んでいるだろうし)カゲミツは頑として受け入れない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

退院の日。
タマキはこっそりカゲミツに耳打ちした。
「カゲミツ・・・うちに来ないか?」
少しポカンとした後、カゲミツは見る間に真っ赤になる。
「タ、タマキのうちに?今日?・・・な、なんで」
「遊びに来いっていうことじゃなくてことじゃなくてさ、」
車で寝起きされるより、自分の家に来てもらった方がまだマシだ。
キヨタカとヒカルにもそう打診し、了承は得ていた。
「退院したてで車で寝起きするって、やっぱり体によくないと思うんだ。俺の家にしばらくいたらいいよ」
「いや、でも・・・迷惑だろうし、」
「迷惑だって思ってたら言わないよ。・・・カゲミツはいやなのか?」
「いやじゃないけど・・・」
その時、一応上司として担当医に挨拶をしてきたキヨタカが戻ってきた。
「準備はできたか?・・・どうした、何をモタモタしてる」
無言で向き合っている二人を見て、キヨタカは不思議そうに声をかけた。
「タマキ、説明はしたんだろう?」
「あ・・・、はい」
「迷惑だろうし、俺は車でいいから」
「だから迷惑じゃないって・・・!」
「どうしたんだ、カゲミツ。そこは大喜びで飛びつくところだろう?」
「うるせぇ、眼鏡!」
「退院したてで車で寝起きするのも体調面で問題があるだろう。しばらくタマキの家にやっかいになるといい」
「〜〜〜〜〜〜〜ッ」
カゲミツは、困ったようにタマキを見ると無言でカバンを手に取った。


病室を出て並んで3人で廊下を歩く。
正直なところ、タマキはカゲミツは喜んで家に来てくれるだろうと思っていたので少し戸惑った。
病院を出ると、キヨタカはタマキに「じゃあ頼んだぞ」と言い、バンプアップへと戻っていった。
「そういや、タマキは今日仕事は・・・?」
「あ、有給取ったから大丈夫」
「そうなのか?わざわざごめん」
「俺がそうしたかったんだ。・・・荷物、それだけでいいのか?」
カゲミツは大きめのボストンバックを担いでいるだけだ。
「ああ、元々着替えくらいだし・・・足りないものがあったらコンビニでも行くから」
「そっか、」
「あ〜久しぶりのシャバの空気!」
カゲミツは大きく深呼吸して伸びをした。
久しぶりに見る太陽の下でのカゲミツの笑顔にタマキはドキリとした。
こうしてまた一緒に歩けるのが何より嬉しい。
タマキはカゲミツに寄り添うように近づいた。

・・・が、スッと一人分の距離を置くようにカゲミツが離れた。
一瞬、気のせいかと思った。
何故なら、カゲミツはいつも隣にいてくれたから。
ミーティングルームでの席は決まっていて、タマキの隣はカナエの席だった。
だが、それ以外では・・・大抵カゲミツはタマキの近くに来てくれた。

急にタマキは不安になった。
喜んでくれると思い、家に誘った。
けれど乗り気ではない様子に近くに寄ろうとすると離れる・・・。
なんでだろう?
何か気に障るようなことした?
嫌われた?
避けられてる?
不安な面持ちでカゲミツに視線を送ったが、それにカゲミツは気がつかないようだった。


タマキの部屋はセキュリティー付のマンションの最上階の角部屋だ。
玄関を開けてもカゲミツは靴を脱ごうともしない。
「どうした?入れよ」
「・・・ああ、お邪魔します」
荷物を置いたカゲミツは、落ち着かない様子でソファに浅く腰掛けた。
広いリビングは大きな窓から陽光(ひかり)もよく入る。
「・・・疲れてないか?」
タマキが近寄ると、カゲミツはビックリしたように体一つ分ずれて据わり直した。

・・・ああ、やっぱり。
何だか避けられてるようだ、とは思ったが直接カゲミツに聞くには勇気がなく、タマキは俯いた。
「・・・コーヒーでも淹れるな。飲むだろ?」
沈黙が怖くなり、タマキはカウンターキッチンへと向かった。
珈琲豆を挽いていると、カバンを持ったカゲミツが現れた。
「どうしたんだよ、座ってたら?」
まさか、帰ると言うのだろうか?
タマキの心臓が早鐘を打つ。
「いや・・・あの・・・、タマキ」
言いにくそうにカゲミツが頬をかく。
「シャワー貸してくんねぇ?」
「・・・へ?シャワー?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ああ、サッパリした!」
バスルームのドアが開き、タオルで髪を拭きながらカゲミツが出てきた。
「サンキューな、タマキ」
いつものつなぎと違ってTシャツにジーンズと言う出で立ちだが、容姿がいいと何を着ても様になるとはこのことか。
カゲミツが着るとユニクロのTシャツでもブランド物に見える。
「傷口は大丈夫なのか?」
タマキは恐る恐るカゲミツの頭に手を伸ばすと、カゲミツは「平気」と言ってニッと笑った。
さっきまでの態度と違うことに驚きつつも、嬉しくて。
タマキは手を滑らしカゲミツの頬に手を添えた。
「・・・なんだよ、さっきまで素っ気無かったくせに」
「あ〜・・・ごめん」
カゲミツは決まり悪そうに頬をかいた。
「いや、入院してる間・・・満足行くまで風呂って入れないから」
確かに病院内では入浴時間にも決まりがあるし、一人一人自由に入れるというわけではない。
特に重傷だったカゲミツの場合は制約も多かっただろう。
だが、自分が発した言葉の答えにはなっていない気がしてタマキは首を傾げた。
「俺、臭いんじゃないかって」
「それ気にしてたのか?」
「当たり前だろ!タマキに臭いとか思われたら俺死ぬしかねぇし!このまま車に戻るつもりだったから服も着替えてない・・・」
言葉を遮るように、タマキはギュウッとカゲミツに抱きついた。
「タ、タマキ?」
「よかった・・・。俺、嫌われたのかと思った・・・」
背中に回した手に力を込めると、カゲミツもそれに応えるようにタマキの背に腕を回した。
石鹸の香りがタマキの鼻腔をくすぐる。
「・・・カゲミツの匂いだ」
胸に頬をすり寄せる。

カゲミツが撃たれて・・・、入院している間に気がついた。
自分を肯定してくれるのはもちろん、いつもこの匂いに包まれていたことに。
それくらい、側にいてくれたのに。
もし、このまま目を覚まさなかったら…と、眠りから覚めないカゲミツを見て何度も恐怖で崩れ落ちそうになった。
もう、離れないで欲しい。いや、離したくない。
「そばにいて…」
タマキはカゲミツに抱きついたまま、背中に回した手に力をこめた。
そうしてカゲミツを見上げると確かめるように言葉を口にした。
「カゲミツが撃たれて・・・、その時に初めて気がついたんだ。すごく大事な…ものを・・・失うかもしれないって・・・俺・・・ッ」
途中涙を浮かべ、言葉を詰まらせるタマキにカゲミツはたまらず唇を重ねた。
「タマキ、好きだ・・・!」
「俺も・・・、俺も好き。カゲミツが好きだ・・・」
啄ばむ様に何度も口付け、カゲミツはタマキの頬を伝う涙を唇で吸い取った。
感触に、タマキはうっとりと目を瞑る。
カゲミツはタマキの頬を両手で包むと額を合わせた。
「もう、離れないから」
「うん・・・」
嬉しそうなタマキの笑顔に眩暈がした。


・・・ずっと、そばに。

・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。

すみません。何か中途半端ですみません。

J部隊のみんなってどんな部屋に住んでいるんだろう。
キヨタカは来たら落ちそうな部屋に住んでる気がしますw照明とか凝っちゃってwww
(来たら落ちそうな部屋=やらしい部屋とも言いますw)
それぞれいい部屋に住んでそうな気がするんですよね。
高給取りっぽいし。各部隊の人たちってキャリア組みっぽくないですか?
一応(一応言うな)死と隣り合わせな仕事なわけだし・・・一応特殊任務なわけですし。
けっこういい部屋に住んでるのではないかと。いや、住んでいて欲しい!妄想!

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あきゅろす。
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